第218幕
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「バーさん、いつもの」
いつもの見回りの途中、海と土方はタバコ屋に来ていた。
タバコを吸わない海にとってはあまり馴染みのない場所。
店主であるおばさんはタバコを吸いながら土方が頼んだ銘柄の箱を取り出す。そのついでに宝くじに興味があるかと聞かれた。
「俺が今までここにタバコ以外のモン買いに来たことがあるか?」
「そうじゃなくってさ、これ」
「うん?」
タバコの箱に置かれたのは一枚の宝くじ。
「バラで宝くじを買ったお客さんが一枚落としてっちゃって。ずっと保管してたんだけどアンタいる?」
「悪いが紙切れ一枚に託せる軽い夢なんざ持ち合わせちゃいねーよ」
『買った人間の顔は覚えてるのか?』
「覚えてはいるんだけどねぇ」
宝くじを買った日からその人は店に来ていないらしく、渡すにも渡せない。しかもその人物はその日初めての客だった。常連ならばいざ知らず、顔見知りでもない相手を探すのは苦労する。だからずっと持っていたのだが、そろそろどうにかしたい。
それが土方に声をかけた理由だった。
「どうだい?海くん」
『俺は要らないかな』
「こいつに宝くじなんか似合わねぇだろ」
「そんなのわからないじゃないかい。海くんだってお金持ちになりたいと思ってるかもしれないだろう?」
「そんな簡単になれねぇだろうが」
ふんっと鼻で笑った土方におばさんはやれやれと頭を振る。
「だからいいんじゃないか。当たるまでの夢や妄想を膨らませるのが醍醐味だろう」
『土方、宝くじを買うのはいいけど、コンコルド効果にハマらないようにな』
「いや、買わねぇよ。つか、なんだそのコン……コンコンド?」
『コンコルド効果。今まで買った分がもったいないからといって買い続けてしまうことだよ。ギャンブルとかによく当てはまる。引き際を見極めねぇと大損するぞ』
どっかのバカがそれでこの間、所持金全てスっている。パチンコで勝てるかもしれないと言ってやり続けた結果だ。
新八に叱って欲しいと言われたから注意しに行ったのだが、やった本人はパチンコで負けて不貞腐れていて海の言葉に耳を貸さなかった。
その態度にカチンときたから回し蹴りをして帰ってきてしまったのだが、あれからどうなったのだろう。
『(銀時はどうでもいいとしても、神楽と定春がな……。あいつらちゃんと飯食ってるかな)』
またご飯が食べれなくなったからといって定春が家出をしなければいいが。神楽だって成長期なんだからちゃんと食事をとらせなくてはいけない。
『後で見に行くか』
新八がいるから大丈夫だと思いたいが、保護者である銀時がこれなのだ。何かあってからでは遅い。
「海、帰るぞ」
『終わったのか?』
ぼーっと考えていた間に宝くじの話は終わっていたらしい。土方の手には買い込んだタバコと宝くじ。
『結局もらったのか?』
「落し物を預かるのは警察の仕事だろうってよ」
『なるほど』
そう言って土方は宝くじを懐へとしまう。のちにその一枚の紙切れが大惨事を引き起こすとも知らずに。
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