第217幕
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「すみません。驚かせてしまいしたね」
『お前やっぱり嫌いだわ』
「ふふ……懐かしいですねそれ」
厠から部屋へと戻る途中、海は廊下の先に置かれていた空き缶を目にしていた。
なぜこんな所に空き缶が?と不審に思いながら近づいた瞬間、横からヌッと出てきた手に引き寄せられて海はさっきまでいた部屋とは違う場所へと入り込んだ。
襖越しとはいえ気配が全く読めなかった。いつもはそんな事ないのに。
『ほんと隠密向けだよなお前は』
「桜樹さんに褒められるのは嬉しいな」
『褒めてねぇけど。精一杯の皮肉なんだが?』
海を横の部屋へと引きずり込んだのは銀時たちが思い出せずにいた黒子野本人。
『なんでここに?』
「同窓会をすると聞いたので」
『じゃあ、あの手紙はお前が出したのか?』
「いえ、僕ではありません。あの手紙は偽物です」
首を傾げる海に黒子野は同窓会の真意を語った。どうやら海が桂に問い詰めた通り、あの同窓会は別の人間によって仕組まれたものらしい。
「この同窓会を仕掛けた人達はもう帰らせました」
『そうか。それは助かった』
「いえ、銀時さんと約束しましたから」
『約束?』
「はい。何かあったら助けに行く、と」
そう言った黒子野は微笑んだ。
『約束、ね。その為にここまで来たのか』
「その為だけじゃないですよ。皆さんのお顔を見たかったですし」
『なら普通に出てくればよかっただろ』
なんでこんな回りくどいことを。それにこれでは桂や辰馬は黒子野に会うことなく終わってしまう。
「僕がそうしたかっただけなので。それにみんな僕のことを忘れていますから。そんなところに出ても気まずいだけでしょう?」
全て悟られていた。その事に海は何も言えず、そっと顔を伏せる。
『悪い、俺もお前のこと……』
「仕方ないですよ。桜樹さんとはあまり話したことなかったので」
だとしても、昔は一緒に戦っていた仲間だ。記憶にないなんて言われて、はいそうですかでは終われないだろう。
「それに桜樹さんに気づかれないのは僕にとって誇りなんです」
『は?』
「気配に敏い人が僕に気づかないなんてなんだか嬉しいじゃないですか」
『いや、それは嬉しいのか?』
「はい。いつでも驚かすことが出来るんですよ?」
『やめろ。無駄なことに使うな』
そうだった。こいつはこういう奴だったのを忘れてた。
気配がよまれないからといってよく海に変なイタズラを仕掛けていたのだ。背後から声をかけるのはもちろんの事、虫を出して驚かせてみたり、かくれんぼをしようといっては一番最初に海を見つけてからかってきたり。
思い出せば思い出すほど黒子野への恨みは出てくる。
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