第217幕
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辰馬のからかいを桂が止めようとして揉めた時、こっそりと屋根に登ってきた男がいた。そいつは気分転換に缶蹴りでもしないかと歩狩の缶を手にして。
「あの時、缶蹴りしようって言ったの誰だったっけ……」
なんとか昔の記憶から引っ張り出してきた人物。なんとなくの面影は思い出せても、顔だけはハッキリとしない。
戦の最中だというのに銀時たちは拠点で缶蹴りをすることになったのは覚えている。
高杉と銀時はケンカしながら草むらへと隠れた。そして缶蹴りをしようと言った男が鬼役を買って出て、崩れかけた寺の中で百まで数えていた。
そんな折、敵が奇襲をかけてきたのだ。
だが、これは既に銀時と高杉の耳に入っていた情報。治療に専念していた海が拠点に紛れ込んでいた敵の間者を見張っていたから出来たこと。
「(海には大変な思いさせたな)」
仲間の傷を癒しながら敵の動きを把握するなんてこと海くらいしか出来ない。自分ならその場で斬り殺してしまうだろう。
海がいてくれたからあの作戦は上手くいったのだ。
「あの時爆破した寺で鬼をやっていたのは……」
「誰だったっけえ!?」
『あの時俺は怪我人を外に連れ出してたから知らねぇよ』
確かに海はいなかった。鬼役どころか缶蹴りをしていたなんてことも知らないはず。
「俺たちは忘れてなどいなかったんだ。あの過去を、あの記憶を思い出さぬよう心の奥深くに封じ込めていただけだったんだ。そう……俺たちの仲間を黒子野太助を。缶蹴りの最中、爆殺してしまった忌まわしき過去を」
「じゃ、じゃあ黒子野太助はとっくに死んでいたのか。そのあまりの存在感の薄さから一緒に缶蹴りしていたことも忘れられ、とうの昔に俺たちの手によって……」
「間違いない。それゆえ高杉はこんなものを寄越したんだ。恐らく同窓会は黒子野を惜しむ会と勘違いして」
「いやいやいやいやいや、ありえねーよ。じゃあ……じゃあだよ。あの手紙は誰が俺たちに送ってきたんだ?この同窓会は……俺たちは一体誰に集められたんだ?」
黒子野がもうこの世に居ないのならこの手紙の差出人は一体誰なのかと呟いた銀時に桂が死んだ黒子野が化けて出てきたのではないかと語る。
『銀、手痛い』
「わ、悪い……ちょっとだけ、ちょっとだけだから!」
思わず握りしめてしまったのは海の手。痛そうに顔を歪める海に謝りはしたが、掴んだ手は離せなかった。
『幽霊なんているわけないだろ』
「お前あの旅館でのこと忘れたのか!?あのスタンドを!」
『あれはまた特殊な例だろ』
「特殊な霊!?じゃあ、黒子野は普通の霊なのか!?」
『漢字が違う。ったく、お前ビビりすぎだろうが』
情けない、と呟く海はため息をついてお茶へと手を伸ばす。
「待って離れないで。側にいて!?」
『暑苦しいんだよ!!』
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