第212幕
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ある日の昼下がり。日課となっている書類の整理をしていた海の耳に隊士たちの気持ち悪い声が届いた。
障子を開けて廊下の方へと顔を出すとその声はハッキリと聞こえる。
「きゃ……きゃわゆいー!何これどこで拾ってきたんですか沖田隊長」
「ちょっと待て総悟……これ万事屋んちのワン公じゃねぇのか?」
"万事屋"の単語をが近藤の口から飛び出るのを聞いて、またあいつらが変なことでもしたのかとため息を漏らす。
『今度はあのバカども何したんだ』
「いや、なにかしたわけじゃねぇみたいだけど。総悟がな……」
「捨てられてたんだか家出したんだか、街徘徊してましてね」
「いや……なんでそれをうちに連れてくるわけ?」
総悟の横にちょこんと座っていたのは定春。隊士たちに弄ばれている子犬を心配そうに見つめていた。
『定春、お前なんでここに?』
「あおーん」
『銀時にいじめられたか?』
「くぅん」
『ごめんな。あいつバカだから』
「え?海くんわかるの?何言ってるのか理解してるの?」
『分かってねぇけど。定春がそこらへんフラフラしてる理由なんてそれくらいしか』
「あ、なるほど」
犬と会話をするのは難しい。相手はこちらの言葉を理解しているようだが、こちらは犬の言葉を理解できない。一方的な会話になってしまうから海はなるべく定春の顔色を見て話していた。
『定春、あの子犬はどこの子だ』
もみくちゃにされている子犬は元気がなく、反抗も喜びもしない。あれだけの人間に囲まれたら驚いて吠えそうなものを。
「わんわん」
『……ダメだ。何言ってんのかわかんねぇ』
定春は海に向かって懸命に吠えるが、その意味が分からずに頭を抱える。何かを伝えたがっているのはわかるのだが。
『子犬の面倒見て欲しい、とかじゃないよな?』
「わん!!!!」
まさかと思いながら言ってみた言葉はどうやら大当たりのようだった。
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