第209幕
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眠い。ひたすらに眠い。
眠さでカクカクと揺れる頭で海は自室から山崎のミントンを眺めていた。
朝早くに起こされたあと、海は昼頃まで眠っていた。少し前に起きた海の前に現れたのはおにぎりを持った土方。
薬を飲むために昼食を無理矢理胃の中へと入れ、今は食後の一休み中。
「大丈夫ですか?補佐」
『大丈夫……じゃない。山崎、お前もっと早く打てねぇの?遅すぎて余計眠くなるだろうが』
「これでも十分早く打ってるんですけど……」
げんなりとした顔で山崎はまたミントンに精を出す。そもそも仕事はどうしたんだ。またサボりか。
「海!体調はどうだ?」
ぼーっとミントンを見つめている海の元へ私服姿の近藤がひょこりと顔を出す。
『無理、眠い。あの薬なんか変じゃないか?』
「えっ!?何が変なんだ!?」
『痛み止めと炎症止めだけでこんなに眠くなるもんかよ』
「ほ、ほら!最近は眠くなる成分も入ってたりするじゃねぇか!それのせいじゃないの!?」
『逆だよ近藤さん。最近は眠くならないように作られてんだよ』
風邪の時なら眠くなった方がいいのだが、怪我の治療で眠くなるなんてあるものなのか。それに近藤の挙動が怪しい。海と一切目を合わせず、あっちへうろうろこっちへうろうろと泳いでいる。何か隠し事をしていますと言っているようなものだ。
『それより……どっかでかけるのか?』
「ん?あ、あぁ!ちょっとお妙さん……いや、見回りにだな!」
『お妙さんのところに行くのな』
「違うぞ!!ちゃんと市井の見回りに行くんだ!」
嘘つけ。見回りに行くのになんで鼻の下伸ばしまくってんだよ。
見回りに行くなら隊服を着ろ、隊服を。ジト目で近藤を見やれば、ギクッ!とした顔で近藤は後ずさる。
「そ、そんな顔しなくても……」
『見回りなら隊服で行くだろ普通。私服で外出るならただの外出だろ。なぁ、近藤さん。出かけるなら俺も連れてって』
「え゙、それはダメだって」
『ずっと屯所にこもってたら暇で仕方ない。土方も怪我が治るまでは道場の出入りは禁ずるって言うし、書類も寄越さねぇし』
部屋で大人しく本を読んでいても暇。ぼーっとしていたらいつの間にか眠ってしまう。そうして一日を無駄にするのはもったいない。一人で散歩に行こうものなら土方や総悟に止められて怒られてしまう。
山崎のミントンを見てるのも段々飽きてきたし。
「でも、それ俺がトシに怒られるんじゃ」
『近藤さんなら平気だろ。準備するから待ってて』
「でも、でも……」
『うるせぇ。近藤さんらが変なことしてんのわかってんだよ。散歩くらい連れて行け』
土方に怒られるのではと心配している近藤に向けて睨みをきかせて黙らせる。
『(何してんのかまではよくわかってねぇけど)』
何もしていないと言ってさっさと出て行ってしまえば良かったものを、近藤はその場に立ち尽くして海を待っている。先程の挙動不審な態度と、あの申し訳なさそうな顔で近藤と土方が何かしているのが明白となった。
きっと海が飲んでいる薬に眠くなるような薬が混ぜられていたのだろう。昨日の夜にはあった錠剤が昼には消えていたから。
『(ほんと、過保護)』
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