第209幕
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「海、起きろ」
『ん……』
「朝飯行くぞ」
『も……少し』
早朝、海の部屋に来たのは土方だった。
まだ眠いとぐずる海に土方は小さく溜息をつきながら机の上に置かれている薬を見つめる。
海が退院したのは定定が殺されてから一週間後だった。外傷の方は順調に治ってはいるが、まだ肺の方は油断を許さない状況。もう暫くは激しい運動を控えた方が良いだろうと医者から忠告を受け、土方と近藤は医者にある頼みをした。
最初こそは難しい顔をしていたが、海が病室を抜け出したことを知っている医者は仕方なく処方した薬。
「とはいえ効きすぎじゃねぇかこれ」
痛み止めや炎症止めなどに混ざっているのは睡眠薬。海には薬の成分を告げずに渡しているので、他の薬と同じ肺の治りを促進させるものだと思っている。
海がふらふらと出かけるのを抑えるにはこれしかなかった。だが、少しやり過ぎな気も否めない。
「トシ、海は起きれそうか?」
「無理だ。薬が効きすぎてやがる」
「そうか……。でもなぁ、まだ治ってねぇのに動かれても心配だし」
布団の中でモゾモゾしている海に近藤は苦笑を漏らす。
「海、朝飯食わないと薬飲めないぞ?」
睡眠薬は夜だけだが、他の薬は朝昼晩と三回分。だからこうして起こそうとしているのだが、中々海は起きれずにいた。
「海ー、頼む少しだけでいいから」
『うっ……さい、ゴリ……』
「今ゴリラって言った?え、ゴリラって言った!?」
「言ってねぇよ。トイレ行きてぇって言ったんだよ」
「でも、今ゴリって聞こえたよね!?確かにゴリって!!」
「こんな所でなにやってるんでい」
「総悟!!今、海が俺の事ゴリラって!!」
またうるさいのが増えた。二回目の溜息を零しながら土方は海の布団をめくる。
「海、朝飯食ったらまた寝とけ。それまでは頑張って起きろ」
『……眠い』
やっと目を開けるも虚ろな状態。放っておけばまた夢の中へと沈んでいってしまうだろう。無理矢理起こすのは可哀想だが、怪我を早く治してもらうためには心を鬼にするしかない。
「食堂行くぞ」
『ん、』
うつらうつらしている海の手を取り食堂へと歩いていく。その後ろで近藤と総悟がうるさく騒いでいた。
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