第208幕
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「くそっ、あのバカどこに行きやがった!」
少し目を離しただけでこれだ。あれだけの怪我を負って入院していたのに、海は点滴と呼吸器を勝手に外して病室から消えた。
残っていたのは壊れた携帯電話だけ。唯一海と連絡が取れるものなのにそれさえも残していったのだ。
「(適当に探してる暇はねぇ。早く見つけないと……)」
医者からは海の肺は深刻なダメージを受けていると聞いた。銀時もそれなりの大怪我をしているが、人よりも治りが早いので別に気にする事はない。でも、海は銀時みたいに治りが早いわけじゃない。そんな身体で無理なんてされたら……。
「バカ海!見つけたら説教してやるからな」
今回ばかりは許さない。今までは仕方なく許してきたが今日は絶対に説教をする。どんな言い訳を並べられても絶対に。
「万事屋!!」
「あ゙!?」
近藤に呼ばれて銀時はドスの効いた声で返事をする。もしかしたらという希望で銀時たちは定定のいる牢屋の元へと来ていたのだがどうやらそれは当たりだったらしい。
「海!!」
牢屋の扉の前で倒れている人物が見える。意識がないのか銀時の呼び声に反応する気配はない。急いで側に駆け寄りだらりと伸びている手を掴んだ。
「万事屋、海は……!」
「大丈夫だ。生きてる」
掴んだ手首からは海の脈が感じられる。その事に安堵して一気に力が抜け、銀時はその場に座り込んだ。それは近藤と土方も同じで、ホッと胸をなでおろしていた。
近藤と土方が牢屋の中を確認しに行っている間、銀時は海にまとわりついている"匂い"に苦い顔を浮かべていた。
「なんでここにアイツがきてんだよ」
眠っている海には見知らぬ服が掛けられていた。風邪避けの為に掛けられている服からはどこかで嗅いだ事のある匂い。
「(なんで高杉が……)」
掛けられていた服を剥がして海だけを抱きしめ、忌々しげにそれを見つめた。
「おい、万事屋」
「なんだよ」
「海は起きたのか」
「眠ってるけど?なんで?」
「定定が死んでやがる」
牢屋の方から出てきた土方はタバコを吸いながら渋い顔でそう告げる。
処罰を受けるはずだった定定が誰かの手によって殺された。そしてその場で眠っていた海。
海が定定を殺せるはずがないというのは近藤も土方もわかってはいる。
「起きたら聞いてみるか。何か見てるかもしれんしな」
「まったく、次からこいつに紐でつけておいた方がいいんじゃねぇか?」
それには銀時も同感だ。ふらふらと動き回る海の行動を制限するためにはそれしかない。ただ、海はその紐さえ引きちぎってどこかへ行ってしまいそうだけど。
定定の件は真選組に任せ、銀時は海を病院へと戻した。医師にこれでもかと怒られたが全て右から左へと流れていく。
「(無事で、よかった)」
海が生きているならなんでもいい。ベットで寝ている海の手を握りしめながら目が覚めるのを待ち続けた。
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