第208幕
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暗い病室の中でチカチカと光るもの。海が目を覚ました原因はそれだった。
ベットの脇にある小さい机の上に置かれた携帯。手の届く距離にあったそれを取って開く。
何件もの着信とメール。電話は松平と近藤。メールは土方と朔夜、そして見廻組の佐々木からだった。
残っていた留守電を再生して今回の事の顛末を知る。海が倒れている間に将軍茂茂が上手く事を収めたらしい。その代わりに彼は将軍職を手放したとの事だが。
近藤からの留守電は海の無事を願っているもの。今どこにいるのか、無事であるならば折り返し電話をして欲しい。助けが必要であればどこへでも行く。そんな内容だった。銀時たちと共に城へ突入した海を思っての連絡なんだろうが、途中から涙声になっていて聞き取りづらく最早何を言っているのかわからない。
『ふっ……あの人、らしいな』
海に対してちょっと過保護な近藤らしい留守電に笑いがこみ上げるが、そのせいで胸の怪我が痛み出して悶えた。
『あとは……』
残りはメールのみ。といっても、このメールがやたらと多い。土方と朔夜からのメールはすぐに読み終えたのだが、佐々木からのメールがやたらと多かった。
"今起きたお👀"
"解毒に時間がかかっちゃった😔💦"
"今から行く🚗💭から待っててね😘"
若い女性が使うような言葉使いとカラフルな絵文字。携帯をへし折りたくなるような文面にイライラしつつ最後のメールを開く。
"定定はまだ生きてるよ💪💪天導衆に見放されてしょぼんとしてるお😞"
定定が生きている。その文字を見た瞬間、携帯を力強く握った。パキッと画面にヒビが入った携帯は電源が落ちて静かになる。
『あの野郎……』
散々人をコケにし、銀時や松陽をボロクソに言った男がまだこの世で息をしている。その事実を海が見逃すわけもない。
ヤツはこの世にいてはいけない存在だ。
腕に刺さっていた針を抜き、静かにベッドから下りる。
病院服の状態では目立つ。着替えはないかと辺りを見回した時、海の隊服と紺色の着流しが畳んど置いてあった。
きっと土方や近藤が海が起きた時の為にと準備していてくれたのだろう。彼らに感謝して着流しへと着替えた。
あとは刀だけなのだが、それはどこを探しても見つからない。さすがに病院に持ち込むのは拒否されたのか。
ならば仕方ない。定定の所へ行く道中で奴を殺す武器を調達すればいいだろう。
海が起きたことに気づいていない銀時はまだ気持ちよさそうに眠っている。たった一日の間に色んなことが起きすぎた。まだ彼には眠っていて欲しい。どうか夢の中だけは幸せで。
『先生の……仇はとる、から』
肺の痛みで上手く話せず、咳き込みそうになりながらも呟く。
そうして海は病室を抜け出した。
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