第207幕
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「済んだのか?」
「……ええ」
「お前ともあろう男がそんなになるとはな」
「少々手こずりましたが問題ありません」
「ふん、逆賊が。いい気味だ」
朧の前に倒れている海に向けて定定は鼻で笑い、天導衆が用意した船へと向かっていく。
少々手こずったとは言ったものの、朧の身体は切り傷だらけだった。何度も致命傷になるような攻撃を受け、その度に経絡を歪めて防いだ。
朧の身体について知らない海は首を傾げながら刀を振り続けていた。
ここまで傷を負ったのもいつぶりだろうか。
「家に帰れないと泣いていた子供がこれ程まで強くなるとはな」
泣きじゃくりながら朧の足にしがみついていたあの子供の面影などどこにもない。彼にあるのは人を殺すことに長けた剣術。
松陽から学ばなかった彼は自力でこの力を身につけたのだろう。
「何とも哀れな」
こんな力を付けずにあの頃のように純粋なままでいてくれたらこんな事にはならなかっただろうに。
段々とか細くなっていく息に朧はなんとも言えない感情を抱いた。ここに彼を置いていけば勝手に死んでいく。それは定定が望んだこと。
「朧!何をしている!」
自分を急かす声が聞こえる。天導衆ももうじき来る頃だ。
「お前はここに来るべきでなかった」
そうすれば死ぬこともなかったはず。
「朧!!」
海をそのままにし朧のは定定の元へと向かう。
「ヤツにトドメは刺さなくていいのかね。また追ってこられても困るだろう」
「動けるほどの力はありません。あの状態で動けば折れたあばら骨が肺に刺さります」
あばらと片足は折れている状態。例え起き上がれたとしても立つことはおろか、呼吸をするのもままならないだろう。
「いいからやれ。生きていることが問題なんだ」
不穏分子は排除しろ。それは昔に受けた命。
定定が気味の悪い笑みを横目に朧は海に向けて針を放った。
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