第207幕
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『流石にそう簡単にはいかねぇよなぁ』
銀時をあそこまでやった男なのだ。そう簡単に倒すことは出来まい。
朧は毒針を使って距離を保ち、海が懐に潜り込んできた時には気功を使ってまた距離を置こうとした。
これではもともに戦えない。針を避けることは何とでもないが、あの手だけはめんどくさい。飛び道具を持っていないから距離をあけられてしまっては何も出来ないのだ。
『めんどくせぇやつ』
「立ち去れ」
『は?』
「元の巣へと戻るがいい」
この場から消えろ。朧はそう海に言っている。
それはまるで見逃してやるからとっとと失せろと言われているのと同じこと。
『誰が逃げるって……?あ゙!?』
飛んできた針を振り払い、朧の前へと飛び出す。眼前へと向けられた手を刀で斬りつけて叩き落とした。
「くっ……」
『お前らを殺すまでは逃げねぇよ』
「これが吉田松陽が生みし子供か」
『先生は何も関係ない。あの人はこんな事教えはしなかった』
人を殺すための剣なんて教えてもらっていない。
松陽には何度も剣を教えてもらった。銀時とも数え切れないほど剣を交わしたが、それは誰かを守るための剣術。誰かを殺すための武器ではなく、守るために使う武器として松陽と銀時は教えてくれたのだ。
それを海は人殺しのための武器に変えた。
彼らの思いを壊してしまったのは己なのだ。
「あの迷い子がこんな風になるとはな」
『迷い子?』
「戯言だ」
どこか哀愁のように感じられた言葉に首を傾げる。
海は朧のことは知らない。だが、朧は海のことを知っているような素振りに見える。銀時のことも知っていたことから察するに、もしかしたらあの戦争の中で朧と接触していたのかもしれない。
『(記憶には……ねぇよな)』
あの時のことを全て覚えているかと言われたら無理に等しい。生きるのに精一杯で、その日あったことなんてすぐに忘れてしまっていたから。仲間の死に憂いている暇だってなかったくらいに。
「立ち去らぬというのなら殺すまでだ」
漸く朧の方も本腰を入れ始めたのか、今まで使わなかった錫杖に力を込める。
『死ぬのは俺じゃなくてお前らの方だ。散々人の事を蔑んだんだ。その相手にやられる気分はどうだろうな』
必ずやこの男は討ち取る。でなければ報われないじゃないか。自分も、先生も、そして銀時も。
『お前はここで殺す!』
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