第207幕
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「殿、お急ぎください」
「何事だね朧。あともう少しで逆賊どもの無様な最後が見れたであろうに」
「カラスたちが騒いでおります。どうやら風が変わったようです」
「何を言っているんだ。賊どもはもう……」
朧が見つめる先。そこから爆発音が轟き城を僅かに揺らす。音のもとにいたのは城の警備に当たっていたはずの真選組。
「これは一体どういうことだね?」
「真選組と見廻組、江戸の二大武装警察が手を結んだようで」
「彼らは犬猿の仲だと聞いていたがね」
「恐らく何者かが仲立ちしたと思われますが。もうじき船が来ます。用心のためご避難を……それに」
なにかに気づいた朧は定定を庇うように前に立ち、錫杖を構える。
「どうやらネズミが一匹ついてきているようです」
「ネズミだと?」
朧が見据える廊下の突き当たりに投げられてきたのは数人の死体。
角から姿を現したのは真選組の服を着た男。
「なぜここに……!朧、奴を殺せ!」
「……御意に」
部下を引きずりながら歩いてくる人物に向けていくつもの毒針を投げつけた。一本でもその身で針を受け止めれば相手の動きを止めることが出来る。無謀にも一人で追いかけてきた彼はここで孤独に死ぬ。
『遅い。まったく……毒の回りが早かったらどうするんだ。帰ったら説教だな』
「なぜ生きている!!」
『あ?老いぼれじじいには見えないだろうなぁ?』
「朧!!」
「ヤツは全ての針を弾いたのです」
持っている刀で全ての針を弾き返した海はかったるそうに引きずっていた男をその場に落とした。苦しそうに呻いている男の頭目掛けて海は刀を突き刺す。
「貴様、自分が何をしているのかわかっているのか!」
『さぁな。お前の首をとることしか考えてなかったわ』
あっけらかんと答える海に定定は怒りを顕にする。その矛先は朧へと向けられた。
「何をしている!!早く殺せと言っているだろう!」
「あの者は一筋縄ではいきません」
「そんなことは知らん!!お前なら出来るだろう!!」
簡単に言ってくれる。かったるそうにしている海を見つめながら朧は心の中でボヤく。
松陽が育てたのはあの鬼だけではない。目の前に立つ男も普通から外れて生きている。
「あの者は化け物です。殿、どうかお下がりを」
刀に付いた血を振り払い、海は顔を上げる。その顔に張り付いているのは怒りの滲んだ笑みだった。
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