第206幕
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「フッ……随分と手こずらされたものだな。卿を前にしてこれほど長く生きた者も稀であろう、朧」
銀時との攻防によりボロボロになった籠が男の頭からずり落ちていく。海にとっては見知らぬ男だったのだが、男の顔を見た銀時は驚きで固まっていた。
『銀時……?』
「いえ、以前にも一度。天照に抗いし修羅が一匹。変わらんな、お前のその目は白夜叉」
「て……てめえは……」
銀時と朧のやり取りから察するにどうやら二人は以前にも会っている。しかも、銀時を白夜叉よびするということは、この男は攘夷戦争時代の銀時を知っているということ。
だが、海には朧の姿は全く見覚えがない。銀時とともに何度も戦地に足を運んだのにも関わらずだ。
「おや、知り合いか朧」
「殿、寛政の大獄の遺児にございます」
「寛政の……大獄?」
「そなた吉原の者か。ならば知らぬのもムリもない。攘夷戦争……開国の折、政も知らぬ侍どもは幕府を売国奴と蔑み世の機運は攘夷一色となった。天人との関係悪化を懸念した我々は侍どもを弾圧。以来、この国は長らく内戦状態へ突入した。戦いが長期化するにつれ天人たちは反乱鎮圧の協力の名の下、内政にも干渉しだした」
それが原因で天人が幕府に介入する手立てを作ってしまった。そんなことを知らなかった海たちはひたすら戦争を続け、天人は海たち攘夷志士を鎮圧するために兵を送り続ける。
戦争が悪循環を生んでいると気づいていたならば。この国の行く末は変わっていたのだろうか。
「そして天導衆指揮の下、幕府が執り行ったのが世紀の大粛清といわれる寛政の大獄。各地に散らばる攘夷を扇動せし不穏分子を大名、公家に至るまで容赦なく粛清の対象とし、根こそぎ刈り取ることで攘夷運動は急激な衰退を辿ったのだよ。そのために私の手足となって働いたのが卿らであったな。あのころはまだ先代頭であったがあれもまた卿に勝ると劣らぬ古武術、発勁の達人であった」
「殿、侍たちはあれで終わったわけではありません。指導者を失い侍たちが次々に剣を捨ててゆく中、大獄よりある者を奪還せんと決起した者たちがあったのです。それが"最後の武士"と呼ばれたこの者たち……天に仇なした大罪人悪逆無道の徒、吉田松陽。その師を取り戻さんと剣を持った弟子たちです」
『あの人は何も罪など犯してはいない!!!』
しんと静まり返った中、海の悲痛な叫び声が響き渡る。
子供だった海たちにはあの人を守って助けることは出来なかった。村塾を燃やされ、捕らわれた松陽をただ泣きながら見ているだけだった。
「……殿、その名覚えておられますか?」
朧の問いに定定は考えることも記憶にないと呟く。それどころか、松陽を侮辱する発言まで残した。
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