第206幕
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「馬鹿馬鹿しい。この国を統べる私を、法そのものである私をどうやって裁くというんだね」
『法なんて要らねぇだろ。最初からこうすれば良かったんだ』
無防備な定定へと向けて己の刀を投げる。切っ先は真っ直ぐ男へと向かっていったのだが、定定に届く前に刀は何者かによって弾かれた。
顔を隠すように籠を被り、僧のような出で立ちで錫杖を操る男。
「天変に遭いて天照を恨む者があろうか。いかなる凶事に見舞われようとそれは天が成したこと。天が定めし宿命。ただ黙して受け入れよ。天の声を我らが刃を」
ぞろぞろと集まってきたのは僧の見た目をした男たち。だが、普通の僧と違って慈悲の心など持ち合わせてはいない。むしろ逆の雰囲気をかもしている。
「あれは……!?」
「気をつけろ。あれはただの御徒衆じゃない。古くから時の権力に利用され影より国の采配に関わってきた暗殺組織。冷酷無比な仕業から太平の世に中央から除かれた禁忌の存在。定定は御庭番衆を廃してより繋がり、その謀略に利用してきた……」
「我らこそは天が遣い八咫烏、天照院奈落」
「朧……天照院首領にして奈落最強の凶手。あの男まで出張っていたなんて」
『やたらと詳しいなぁ、信女』
あらゆる手を使って調べあげた海でさえも知りえなかった存在。真選組と見廻組では開示されている情報が違うため、海が知らなくても仕方ないことなのだが、西ノ宮の残していた資料を全てひっくり返してもそんな名前は出てこなかった。
まるでかつてはその集団に属していたかのような物言いの信女に海は不信感を募らせる。
「裁くは天、すなわち将軍。裁かれるは地をはう者たち。それが世の理だ。そなたらに出来るのはただ黙って天を仰ぎ見ることだけだ。だが嘆くとこはない。天がもたらすは災いだけではない」
どさり、と海たちの後ろに何かが落ちる音。音につられて新八たちが後ろを見た。
「恵みをもたらすのもまた天だ」
『クソ野郎……』
振り返らなくても分かってしまう。鼻につく血の匂いで。
「捜していたのだろうその男を」
「じ……じいやさーん!」
「この場を切り抜ければ鈴蘭とその男を会わせられるぞ。到底吉原までその命がもつとは思えんが。もっとも間に合ったところでもうその男には指切りどころか愛しい女を抱きしめることも出来はしないが。大人しく腹を斬っておればよいものを。一度ならず二度までも私を裏切るとは大した忠臣だよ。これが天に仇なした者の末路だ」
「海」
『わかっただろ。これがあいつのやり方だ』
両腕を斬り落とされたじいやはもはや虫の息。月詠が必死に手当をしてくれてはいるが、すぐに病院に連れていかなければ出血多量で死ぬだろう。
「前言撤回するわ」
そう言って銀時は木刀を手にして定定の所へと突っ込んで行った。
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