第206幕
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「将軍様、お待たせいたしました。デリバリーナンバーワン太夫。傾城鈴蘭、参上つかまつりました。今更チェンジはなしだぜ。汚えケツはよく洗ったか。今夜は眠らせねぇよ?」
黒煙が舞い上がる中、城へと侵入した海たちを出迎えたのは定定本人。
「長生きはするものだ。歴史をひもといてもこれほどまでお上を愚弄し、徳川紋に泥を塗ったのはそなたらが初めてであろうな。免罪を乞うどころか天下に仇なす大罪を犯そうとは」
「大罪を犯したのはあなたのほう。あなたのこれまでの所業は全てこの見廻組副長、今井信女の知るところ。徳川定定、幕臣暗殺教唆の容疑で逮捕します」
『安心しろ。今すぐその首差し出せとは言わねぇよ。これまでやった事を全て吐いてもらうまでは生かしてやる』
だから素直にお縄につけ。手錠を片手に定定へと一歩近づく海に向けて定定は気味の悪い笑みを浮かべた。
「一橋の犬の生き残りに、西ノ宮の童子か。ふんっ……親が親なら子も子だな。一家で私を貶めるとは」
『ああ、その節はどうも世話になりましたよ』
"西ノ宮"という名前が出てきて即座に反応したのは銀時だった。咄嗟に海の方を振り返り、不安げな目で見つめてくる。
「お前の父親が犯した過ちがどれだけ私を苦しめたことか。西ノ宮が勝手に行っていたことなのに私たちも共犯だと思われていたのだぞ」
『ええ。知ってますよ。なんせその告発をしたのは俺ですからね』
西ノ宮が行っていた天人との貿易、といってももはや貿易とも言えないものだったが。西ノ宮個人で天人に賄賂として人間を流していたのではない。その裏に西ノ宮を操っていた人物がいた。
西ノ宮を天人との交流の仲人として散々こき使い、いざ問題が起きた時は簡単に切り捨てた男。
『貴方があの男を裏で操っていたことは全て分かってるんだよ。西ノ宮は案外用心深い男でしてね。貴方とのやり取りや天人との取引、そして天導衆から任された賄賂の全てをな』
「そんなものがなんの役に立つというのかね。西ノ宮は既に投獄された身。あの男は死刑が確定している。今更過去のことを掘り返してもなんの意味ももたない」
『確かにあんたらからしたら全部過去の出来事で、西ノ宮が勝手にやったかもしれないな。だけどな、今もまだ苦しんでる人は沢山いるんだよ』
西ノ宮の手によって誘拐されてしまった妻や子供。その帰りを待っている家族。彼ら彼女らの苦しみは癒えることなく続いている。この先、被害にあった人達が立ち直れる日がくるのか。
そんなの分かりきっている。
『お前らが私服を肥すためにどれだけの人達が酷い目にあってると思ってるんだ。この罪はてめぇの首一つで贖えると思うなよ?』
定定だけでは足りない。この件の関係者全員の首を斬らなければ気が済まないだろう。
これは海一人が望んだことじゃない。被害者らの総意である。
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