第230幕
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「迷惑をかけたくない人がいるのですか?」
銀時の問いに海は暫し黙り込む。
「どうしてかけたくないと思ったんですか?」
『……負担を……』
「負担?」
『負担をかけるから。そいつは……その、恋……昔馴染みのやつなんだけど』
恋人、と言いかけてから昔馴染みと言い換えた海は恥ずかしそうにそっぽを向く。その姿があまりにも可愛らしくて、今すぐ飛び出して抱き締めたい衝動にかられる。銀時が一人悶えている合間にも話は進んでいき、海が銀時に迷惑をかけたくないと言った理由が分かってきた。
『いつも変なことに首を突っ込んでは怪我をするし、背負わなくていいものを背負って帰ってくる。手を貸してやりたいのは山々だけど、自分の立場を考えると手が出せない。他のことで手一杯なはずなのにアイツは俺の事まで気遣ってくれる。だから、自分のことは自分でなんとかしたいんだ』
それは切実な思い。銀時が海を心配しているように、海もまた銀時を心配している。
海が迷惑をかけたくないと相談した理由が少しだけ分かった気がした。
「貴方の気持ちはわかりました。大切な人に迷惑をかけたくないという思いは私にも分かります。でも、人間とは誰かに迷惑をかけて生きていくものです。それが親しい人間であっても他人であっても。他人から受ける迷惑は嫌なものですが、大切な人から受ける迷惑はまた違うものですよ」
『迷惑には違いない気がするけど』
「聞くだけではそうかもしれません。ですが、愛する人の悩みだったら共に解決したいと思いませんか?」
『それは……』
「ずっと悩み続けてその人が傷ついていくのを貴方は見ていられますか?」
『……無理だ』
「君は迷惑をかけるくらいなら自分で解決したいと言いましたね。それは一人で悩んで傷ついて答えを導き出すということでしょう」
きっと西ノ宮の処刑に関して海は悩んだはずだ。あの男は処刑されても仕方ないやつだが、その傍らにいる妻の方はそうはいかない。海からしたら関係ない人間でも、朔夜からしたら実母なのだ。
そんな人を手にかけて朔夜がなんと思うか。でも、ここで女を助けるようなことをしたら西ノ宮に家族を奪われた人達が黙ってはいない。
朔夜の為に女を助けるか、それとも被害者達のために女を殺すか。その判断をくだすのに海はどれだけ悩んだんだろう。
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