第228幕
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予定していた時間になると、役人は手元の紙を広げて罪人の名前と罪状を読み上げる。朝っぱらからよくそんなでかい声が出るもんだなと感心していた海の元へと刀を手にした男がやってきた。
「こちらの刀をお使いください」
『申し訳ないが、俺は普通の刀では首を斬れない』
「承知しております。こちらの刀は桜樹さん用に加工されたものです」
『俺用に?』
男が差し出している刀を手に取る。それは確かに海の為に作られたかのような刀。今腰にあるのと同じくらいの長さと重さ。不気味なくらいそれは手に馴染む。
『これは誰が手配したものだ』
海が普通の刀を苦手としているのは限られた人間しか知らないはずだ。こんな扱いづらい刀をわざわざ作るだなんて一体誰が。
「見廻組の佐々木殿からです」
『……見廻組だと?』
「はい。私も佐々木殿からこの刀を渡すようにとしか言われておりませんので」
男はそれだけ言うと頭を下げて海の前から立ち去った。
『佐々木は知らないはずだろ』
佐々木の前で刀を抜いたことはあっただろうか。あったとしても見ただけで海が使っている刀の特徴を捉えることなんて不可能だ。
考えられるとしたら。
『晋助か』
晋助は今日のことを知っているし、海の刀の特徴も熟知している。
『でもなんでわざわざ?これ一から作った物じゃねぇか』
渡された刀には傷一つついていない。作られてから試し斬りもされていないのだろう。
何故?と疑問ばかり募っていく。今すぐ晋助を探し出して聞きたいくらいだ。
「桜樹さん、お願いします」
役人に声をかけられて刀から顔を上げる。
「処刑が終わり次第、罪人たちの首は梟首としますので」
『晒すのか。分かった』
彼らには重い刑罰が与えられている。首を斬られるだけでは留まらず、一定期間その頭を民衆の目に晒すのだ。
『見回りのルート変えないとだな』
帰ったら朔夜の見回り先を変えなくては。でないとあいつらの首を見ることになってしまう。
死んでも子供に迷惑をかける厄介な親に海は小さくため息をついた。
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