第228幕
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早朝、海は役人に連れられて予定の場所へと来ていた。
屯所を出る際に何度も近藤に引き止められたせいで出るのが遅くなり、さっきまで迎えに来ていた役人に文句を言われていたところだ。
朝の早い時間帯だというのに人集りができていた。それぞれ手に何かを持って。
「早く死んでしまえ!!お前のせいで、お前らのせいで私の娘は!!」
「あの世で妻と子供に詫びろ!そして地獄へ落ちてしまえ!」
集まっている人達は皆、西ノ宮によって家族を奪われた人達だ。きっと手にしている物は奪われてしまった家族の遺品。大事そうに抱えながら彼らは俯いて座っている西ノ宮夫婦へと暴言を吐き続ける。
「何よ!全部私たちが悪いって言うの!?あんたらがちゃんと自分の子供を見てなかったから悪いんでしょ!?」
「このクソ女ッ!!」
西ノ宮の妻はぐしゃぐしゃの髪を振り乱しながら嘲笑う。
ここに朔夜を連れてこなくて正解だった。自分の母親があんなにも変わっていたら嫌だろう。
牢屋に入れられていたストレスのせいか頭髪に白が混じり、健康的だった肌はボロボロになっている。顔には爪で引っ掻いたような線がいくつもあり、その姿はまるで山姥のようだ。
『哀れだな』
役人に押さえつけられながら喚き散らす彼女に海は一言漏らす。その声に反応して、西ノ宮がこちらへと顔を向けた。
妻と同様にやつれてはいるが、まだ西ノ宮だと判断出来る。
「久しぶりじゃないか、海」
『再会を喜び合うような仲じゃない』
「そんなつれないこと言わないでくれよ。私たちは"親子"だろう?」
『お前を父親だと認めたことは無い』
「だが、事実だ。私の血を受け継いでいる子供だよ」
西ノ宮はそう言ってゲラゲラと笑い出す。そんな姿は生まれて初めて見る。狂ったように笑う相手に思わず身構えると、西ノ宮はパッと真顔へと戻した。
「お前は汚点だ。お前を作らなければ私は上手くやっていけた。お前の母親と結婚しなければ……」
『そりゃ遅い後悔だな』
恨めしそうにこちらを見る目を鼻で笑い、海は役人の元へと向かう。
『今更悔いたって遅いんだよ。何もかも』
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