第228幕
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朝右衛門が自裁した。
それは今までの自分と決別するという意味合いでもあったのだろう。
十九代目、池田夜右衛門となった朝右衛門は迷いのない瞳で銀時を見る。
「ありがとうございました」
「何が?」
「貴方たちが私を介錯してくれたから今ここに立っているんです」
夜右衛門の澄んだ瞳が眩しく見え、銀時はそっと目を逸らす。
「何もしてねぇよ。自分で考えて決めたことだろ」
「私一人では決められませんでした。きっとこれからもずっと逃げ続けて、自分を責めるだけの人生だったと思います。そんな私を斬ってくれたのは貴方たちですよ」
礼を言われるようなことはしていない。ただ、巻き込まれたから終わらせただけであって、夜右衛門の悩みを解決してあげようなんて思っていなかった。依頼を受けたからこなしただけ。
夜右衛門が前を見て歩けるようになったのは彼女の心が変わったから。
「そうかい。まぁ良かったんじゃねぇの?お家の取り潰しも無くなったみたいだしよ」
「はい。桜樹さんが池田家を守ってくれたみたいです」
「海が?」
「先代夜右衛門が起こした辻斬りを桜樹さんが処理してくれたそうなんです」
「ふーん……」
詳しいことは分からないが、どうやら海が裏で手を回したらしい。そういう所はずる賢いというかなんというか。
「あの、桜樹さんにお礼を伝えていただけますか?」
「礼?」
「グズグズしていた私の背中を押してくれたんです。言い方は酷かったけれど、そのおかげで外に出れました。それに……」
「それに?」
夜右衛門は申し訳なさそうな顔でポツリと一言。
その言葉に銀時は大きく目を見開き固まった。
「桜樹さんが今日の処刑を代わってくれたんです」
「……は?」
「夜右衛門の名を襲名したばかりで忙しいだろうからと」
夜右衛門の代わりに海が?
「そ、それじゃあ今海さんは!?」
「今日予定されている罪人の処刑を行っていると思います」
「だ、誰アルかソイツ!」
「えっと……確か、贈賄罪、略取、誘拐及び人身売買の罪で捕まっていた西ノ宮という夫婦だったはずです」
「そ……それって……」
"西ノ宮"の名前を聞いて新八の顔は段々と青ざめ、銀時の顔を伺うようにこちらを振り返る。
「銀さん……!」
「あのバカッ!!」
海は夜右衛門を思って処刑人を代わったんじゃない。
最初から自分の手で西ノ宮の首を落とすつもりだったんだ。
「夜右衛門!海は……あの大バカ野郎はどこだ!!」
驚いている夜右衛門から無理矢理場所を聞き出し、銀時は走り出す。今から向かって間に合うかは分からない。それでも銀時は全力で走った。
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