第227幕
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「それで?てめぇはこんな所でなにやってんだ」
『仕事に決まってるだろ。そうじゃなきゃこんな殺伐とした場所に来たくもねぇよ』
喜々たちの気配が無くなったあと、晋助は海がいる船の方へと飛び乗ってきた。
「仕事熱心なこった」
『晋助もテロ活動を熱心にやってるみたいで』
「これは俺の生きがいだ。とでも言えばいいのか?」
『まさか。そんな生きがいへし折ってやるよ』
「そう簡単には折られやしねぇさ」
灯りのない真っ暗な海の上だが、今晋助がどんな表情をしているのかが手に取るように分かる。普段からそうやって柔らかい笑みをしていれば怖がられることも無いのに、なんて思いながら海は晋助から目を逸らした。
『その……あの時は助かった』
「なんの事だ」
『あのクソ狸殺ったの晋助だろ。俺が殺るつもりだったのに』
「お前が気にすることは何一つねぇよ。アイツの始末は決まってたことだ」
『見廻組と手を組んで、内部の混乱に乗じて……定定を殺すって?』
海の問いに晋助は答えず、ただ煙管を吹かすだけ。これ以上聞いても何も答えてはくれなさそうだ。警察である自分にテロ計画をバラすのもおかしな話だろうし。
『あまり目立つ動きはするなよ。また辻斬りだのなんだのやられたら仕事が増えて大変なんだから』
「おいおい……それがテロリストに言う言葉か?」
『普通のことだろ。人が死んだら警察が動くのは当たり前だ。ここ最近動き回ってて疲れてるんだよ。だから暫くは大人しくしてて欲しい』
頼むから、と付け足すと晋助は目を丸くしてから吹き出すように笑った。
「はっ……海、お前のアホな所は変わっちゃいねぇな」
『誰がアホだ』
「アホだろう。仕事が忙しくなるから大人しくしてろだ?お前もっと他に言うことがあるだろうが」
『他に?』
何か言うことがあっただろうかと考える海に晋助は更に笑う。それは人のことをバカにしているかのような笑い方。
『なんだよ。言いたいことあるなら言えよ』
「いや、何でもねぇ。てめぇも相変わらずのようで安心した」
『今の話の中で安心する要素がどこにあったんだよ』
「てめぇには分かりゃしねぇよ。そんな事より……海」
晋助が纏っていた雰囲気がガラリと変わる。目つきも先程までの柔らかいものではなく、少しばかり怒気が含まれているように感じた。
「お前、親父の首を斬るつもりか」
『……晋助には関係ないだろ。悪い、仕事がまだ残ってるから帰る』
何故晋助がそんなことを知っているんだと疑問に思ったが、見廻組や一橋と繋がっているのであれば話が漏れていても当然か。
「自分から言い出したそうじゃねぇか。首斬り役人じゃなくててめぇの手で首を落とすってよ」
『関係ないって言っただろ。人のことコソコソ嗅ぎまわんのは趣味が──』
「お前はどこまでアイツに……」
『え?』
途中までは聞き取れたが、最後の方は海風に邪魔されて聞こえなかった。
ただ、晋助は怒っているような悲しんでいるような表情で海の事をじっと見つめていた。
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