第227幕
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「やれやれ、親を殺めてまで手に入れた名、結局返上してしまうとはね。共に新時代を切り開こうと約束したのに。一体僕はこれから君をなんと呼べばいいんだ」
「親殺し、辻斬り、一橋の顔に泥を塗ったうつけ。どれでもお好きなように」
「そうか、なら……"ただの首"なんてどうだい」
夜右衛門の背後から現れた男は一言二言会話をした後、刀に手をかけた。
宙に舞った夜右衛門の首は海へと落ち、力を失った胴体がバタリと倒れる。
「うん。初めてやったにしては上出来だ。新政府の処刑人は僕でも務まりそうだな」
血にまみれた刀を部下に拭かせる男、そいつは次期将軍と噂されている喜々。
「お戯れを」
「戯れでもないさ。ただし、僕が斬らなきゃならないのは古き国の首。この一橋 喜々はこの国の処刑人に違わない」
──やはりアイツとはソリが合わない。
今の将軍である茂茂もあまり気が合うとは思わないが、性格はそんなに悪くないと思う。人間性がねじ曲がっているタイプの人間ではなく、ちゃんと善悪を判断できる頭もある。だからそんなに気嫌いはしていない。
人をただの駒だと。上に伸し上がるための踏み台だと思っているような人間とは関わりになりたくない。
「殿、他の連中は?」
「捨ておきなさい。彼の望み通りにしてやるさ。全ての責は彼にある。そしてそれも首と共に海に消えた」
「しかし殿、茂茂の犬どもは……」
「彼らには何も出来ないさ。それに彼らのおかげで面白い見せ物が見れたじゃないか。そうだろ?高杉君。君の獲物を横取りするつもりはなかった。珍しい死体があるというから運ばせたのだが、存外まだ生きていたらしい……白夜叉が」
「ふん……アンタじゃとれねーよ。アイツも俺の首もな」
ちらり、と晋助は喜々から視線を逸らして海の方へと目を向けた。咄嗟に身を隠したものの、隠れたところで意味が無いと苦笑。
「かつての仇敵といえど僕は君を恨んじゃいない。むしろ興味を持っている。君たちの国家にも屈さない力は大きなものだからね。それが味方でも……敵でも」
「ふっ……アンタが幕府を相手取ってるかぎり俺はまたここに立つこともあるだろう。だがアンタがそいつを諦める時、その首に噛み付くのはアイツか俺か……はたまた別のやつか……それは分かりゃしねーぜ」
晋助は喜々に背を向けてふらりと歩き出す。喜々とその部下たちもその場から立ち去って行った。
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