第226幕
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「はぁ?辻斬り犯を先に押さえられただ?」
「ええ。池田家の連中、俺たちより先んじて動いていたようで、一族の恥は一族で始末つけようって魂胆ですかね」
ちらりと総悟がこちらに目を向けてきたが、海は手にしている書類に目を落としたまま無言を貫いた。
辻斬りの犯人の見当がついていた夜右衛門は真選組に黙って犯人を捕まえていた。
海たちと共に事件現場に来たのは確認のためだったのだろう。
『(それにしても……なんだよな)』
総悟と土方の話を聞きながら手元の書類に目を通す。山崎に急ぎで用意してもらった犠牲者たちの履歴。
殺された浪人たちには一つの共通点がある。どの人物も過去に収監されていた身であり、処刑が確定されていたのにも関わらず自由の身になったとのこと。
そいつらが今になって殺されている。受けるはずだった処刑と同じ手口で。
『(これはきな臭いな)』
誰でも良かったわけじゃない。犯人は予め襲う人間を決めていた。この辻斬りは計画的犯行だ。
だが、なぜ今になって逃亡した囚人たちを殺しているのか。
「土方さん、もう遅いですよ。既に下手人は首だけでさぁ。下手人の身柄は俺たちではなく"見廻組"に引き渡されたんでさぁ」
見廻組、と聞こえて海は僅かに顔を上げた。
「厳正なる審判の末、即日打首が決定。池田 夜右衛門の手によって既に処刑は執行されました」
「バッ、バカな。そんな早くに裁きが下るワケが……」
「検視役の確認もとれています。確かに辻斬りの下手人、池田 朝右衛門の首であると」
「いくら何でも早すぎるだろうが!それじゃ取り調べもなんもできねぇじゃねぇか」
『させたくないんだろ。取り調べ』
「は?」
『普通、犯人確保したら犯行理由を問うべきだ。何人も手にかけてるから処刑は免れない。だが、処刑を行うのに手続きがあるはず。人の命を奪う儀式だからな』
処刑手続きに関しては土方たちよりも知っているつもりだ。なんせ西ノ宮の処刑を早めてもらうように嘆願書を出し、自分の手で手続きをしたのだから。
「何が言いてぇんだよ」
『取り調べをさせない為に即日処刑した。その意味は?』
「池田 朝右衛門に何か裏があるってことですかい?」
『いや、下手人の方じゃない』
"池田家"の方に何かある。と呟いた海に総悟は何かに気づいて立ち上がった。
「土方さん、今すぐ下手人の首を確認しに行きましょう」
「おい、どういう意味だ!」
『池田家、というか池田 夜右衛門は何かを隠してる。そのために池田 朝右衛門を利用しようとしてるんだろうな』
「じゃあ、辻斬りは仕組まれてたって言うのか?」
『そこまでは。気になるなら本人に聞きに行った方がいい』
これは推測だ。本当のことは夜右衛門にしかわからない。
『(見廻組が出てきた時点で一橋が関わってるってのは予想つくけど……)』
そうなると、ある人物もこの件に加わっていそうな気がする。出来れば首を突っ込んでいて欲しくない。でも、大抵こういう時は手を出しているのだ。
『それよりなんでここにアイツの名前が載ってるんだよ』
処刑されるはずだった囚人たちの名前一覧に見知ったヤツの名前があって、海はため息をついて頭を抱えた。
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