第225幕
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「あなたたちの父親の処刑日が決まりましたので報告させていただきます」
「あっ……」
遊びに行く予定が決まったよ。そんな、さも日常的な会話をする男に朔夜は戸惑いの表情を浮かべた。
なんて答えていいのかわからない朔夜は隣に座っている海へと目を向ける。重苦しい雰囲気とは相反して、父親の処刑を口にした男はにこやかな笑み。
そして言われた側の海は……。
『やっとか』
ただ、鼻で笑っただけだった。
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公儀御試御用、十八代目池田 夜右衛門。またの名を死神、人斬り夜右衛門、首斬り夜右衛門と様々な呼び方をされている男。
その実は将軍家に納められている刀剣の試し斬りを行っている一族であり、また処刑の役目を任されている者。
そんな男が真選組屯所に来たのは先日の事だ。重苦しい雰囲気を纏わせた部下たち数人を引き連れ、夜右衛門は桜樹兄弟に話があると呼び出した。
屯所の一室に呼ばれた朔夜は夜右衛門を見て首を傾げていたが、彼の存在を知っていた海は何となく察しがついていた。
「国家反逆罪で収監されている西ノ宮 宗太郎、並びのその妻の処刑日時が決まりましたので、ここにて報告させていただきます」
『やっと決まったか』
「おや、驚かないんですか?罪人と言えども貴方がたの父親でしょう」
『俺はアイツを父親だと思ってはいない。ただの罪人だ』
そう言い放った海に夜右衛門は笑みを崩して不思議そうに首を捻る。
「弟さんは何かありますか?」
「えっと……僕は……」
兄は父親の処刑に関して無関心。ならばと朔夜に話を振ってみたものの、ただ戸惑うだけで答えない弟に夜右衛門は小さく笑った。
「どうやら家族から好まれていなかったようですね」
『無駄話はいい。処刑の日時はいつだ』
「五日後の明朝を予定しています」
『わかった。その時は立ち会おう』
「えっ……兄さん行くの……?」
『お前はついてこなくていい。俺が確認すればいいだけだから』
「で、でも、兄さんだけじゃ……」
『他にやることあるだろうが。朔夜は辻斬りの方に専念しろ』
素っ気なく言った海に朔夜は俯きながら頷いた。その場にいた夜右衛門だけは海の気持ちを察したらしく、やれやれといった感じで微笑んでいた。
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