第192幕
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『……なぁ、朱雀。俺たちさっきまでは商店街にいたよな?』
「キュイ?」
『いや、ここは商店街とは言わねぇよ』
さーっと血の気の引いた顔で海が見つめているのは人ならざる者達。二足歩行までは合っている。人型をしているのも。ただ、頭から立派な角が生えていたり、翼が生えていたり、鋭利な牙が見えていたりと異質のオンパレード。
『ハロウィンはだいぶ前に終わったはずだが。次のハロウィンもまだだいぶ先なんだが』
「ピィー」
気にする事はない、と言う朱雀。この光景を見てどうやったら気にしないでいられるというのか。
異形な者達を横目に海はゆっくりと歩き始めた。
見た感じでは江戸の商店街と変わらない。店を出して商売をしているという所までは同じである。ただ、店主が人でなかったり、売っているものが骸骨や虫やホルマリン漬けのような見慣れない商品だということに海は寒気が止まらなかった。
『朱雀、早くここから出るぞ。こんな所で何が買えるっていうんだ。まさかここに売っているものを結野アナに贈る気なのか?』
「キュキュッ!」
『やめておけよ』
朱雀が海の元に来たのは結野アナへの贈り物を探すためだ。日頃世話になっている結野アナに恩返しがしたいと思った朱雀は江戸を飛び回って贈り物を探した。だが、良い物が見つからず、しかも何を贈ればいいのかわからなかった。そこで海を頼ってきたのだ。
先程までは商店街をうろうろと歩き回って色んなものを見てきたのだが、いつの間にかこんな所に迷い込んできてしまった。
『早く元の場所に戻るぞ。こんな不気味なところいつまでも居たくないからな』
ここに売られているものはどれも呪いが掛けられていそうな気がしてならない。そもそも、骸骨をもらって結野アナは喜ぶのだろうか。
『……愚問か』
「キュ?」
『いや、なんでもない』
結野アナならなんでも喜びそうだ。使役している式神から贈られたものなら例え骸骨だったとしても。
『でも、流石にだよな……』
店の前を飛び回りながら朱雀はプレゼントを必死に選んでいる。気持ちだけでも十分な気がするが、朱雀はきっと物として渡したいのだろう。その気持ちは分からなくもないのだ。海が朱雀の立場であったら。きっと一日かけてプレゼントを選ぶだろうから。
『朱雀、もう少し先まで行ってみるか?他にも何かあるかもしれないだろ?』
海の言葉に朱雀は嬉しそうな鳴き声をあげる。早く早くと急かすように飛んでいく朱雀を慌てて走って追いかけて行った先、見慣れた人物を見つけて目を丸くした。
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