第191幕
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佐々木家のごたつきから数日後、未だに入院中である土方の穴埋めのために海は忙しく職務を全うしていた。
近藤からはそんなに仕事をしなくてもいいと言われたが、退院してきた土方がすぐに仕事をしなくてもいいように、溜まっていた書類と以前から追っていた攘夷浪士たちも捕まえておいた。
ここまでやっておけば暫くの間は暇になるだろう。
「海さん!」
ノックもなしに部屋の襖が勢いよく開け放たれる。仕事に専念しすぎていた海は睡眠も削っていた。そのせいで反応が遅れてしまい、突然の訪問者に気の抜けた返事をしてしまった。
『……ん……?』
「え、大丈夫ですか!?凄くお疲れのようですが!」
「まーた徹夜で仕事してたんだろ。この仕事バカ」
ぼうっとする海の前に現れたのは、鉄之助と銀時。海の様子に驚いてあわあわしている鉄之助をよそに、銀時は深いため息をついて呆れた顔。
いつもなら嫌味の一つや二つくらい飛ばしてくるのに、今日はただ銀時たちの顔をぼけっと眺めているだけで、何も言わない海に銀時が再度ため息を零してから室内へと足を踏み入れた。
「寝ろ。どうせ戻ってきてから寝てないんだろ?」
『すこしだけ、ねた』
「お前の少しはホントに少しなんだよ。仕事終わったんだろ?だったら寝ろよ。布団敷いてやっから」
部屋の真ん中にある机を壁際へと寄せ、空いた空間に布団を敷いていく。せっせと布団を押し入れから引っ張り出している銀時を海は無言でじっと見つめていた。
「ほら、用意出来たから寝なさい」
『ん、ん……なんでおまえここにいんの』
「あ?そりゃ釈放されたからに決まってんでしょうが。いつまでもあんなジメジメしたところに居られっかよ」
『だれが』
誰が銀時の釈放手続きをしたんだ?と問いかけると、今まで黙っていた鉄之助が口を開いた。
「桜樹さんの弟さんと近藤局長です!」
『朔夜……が?』
「そーいうこと。だからなんも問題はねぇよ。別に脱獄してきたわけじゃねぇんだから。正式に釈放されたの。だからなんも心配はいらねぇよ」
『ふーん』
別に心配なんかしてないと返そうとしたが、銀時の手が海の頭に乗り、優しく撫でてくるものだから、海は言葉にしようとしていたものを飲み込んだ。
「桜樹さん!自分たちちょっと出掛けてきてもいいですか?」
『どこに』
「あ、それは……」
「あー……なんだ。こいつも色々思うとこあるらしくてよ」
追求する海の目から逃げるように鉄之助は目を逸らす。そんな鉄之助に銀時は助け船を出したが、もはや海の思考は追いついていなかった。
『門限、守れ』
それだけ残して海はパタリと布団の上に転がってしまった。
静かになった部屋では海の寝息だけが聞こえる。鉄之助と銀時は顔を見合せ、微かに笑ってから、海の部屋を出て行った。
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