第191幕
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「ちょっとお二人さん。そんな良い雰囲気醸し出さないでくれる??なに?なんなの?」
不意に銀時の不機嫌そうな声が耳に入り、海はそちらへと顔を向ける。パトカーの後部座席に座っている銀時は声色の通り、不機嫌そうな顔をして海と土方のことを見ていた。
その両手首にはがっちりと手錠がかけてある。
「俺は元なの!!今は善良な市民なんですけどォ!?」
「うるせぇ。最初からきなくせぇと思ってたが、やっぱりクロじゃねぇか!」
「人の話聞いてるゥ!?元って言ってるでしょうが!!」
何度も銀時は今は違うと言ったが、土方は聞く耳を持たない。銀時が助けを求めるように海をちらりと見たが、海は肩を竦めて困ったように笑うことしか出来なかった。
「海、」
『なに』
「その……お前は……」
『……はっきり言え』
銀時から海へと目を向けた土方が途切れ途切れに言葉を吐く。土方が何を聞こうとしているのは分かっていた。
でも、それはまだ言う気にはなれなかった。別に土方達を信用していないわけではない。きっと彼らは自分の素性を話したところで、態度を変えることはないだろう。近藤なら多少驚きはしても、笑って受け入れてくれる気がする。
でも、それじゃいけない気がした。
「お前は……コイツと……」
「違ぇよ」
同じ元攘夷志士なのか、と土方に聞かれるよりも先に、銀時が口を挟んだ。
銀時の言葉に土方も海も口を閉ざして黙り込む。なんと切り出せばいいのか分からず、今度は海が銀時に助けを求めるような目を送ると、銀時は土方にバレぬように口パクで"大丈夫"と伝えてきた。
暫しの沈黙の後、土方がふらりと海へと近づいてきた。
『土方?』
「……海」
『お、おい!』
目の前まで来た土方の身体がグラりと傾く。咄嗟に土方の身体を支えると、土方の腕が背中に回っていた事に気づいた。
「海……」
何度も海の名前を呼ぶ土方の声はか細く、耳をすましていないと聞き取れない。声を出すのも億劫なくらい限界が来ているのだろう。
『お前ッ!やっぱ無理してたんじゃねぇか!』
そんな土方を怒鳴りつけ、早く病院に行くぞと海が土方を車へ乗せようとした時、耳元で土方がボソリと呟いた。
「お前が……何者だったとしても……お前は俺の……」
そこで言葉は途切れる。一気に海に掛かる重さが増し、土方が気絶したのだと察した。そして、土方が言いたかった事も。
『……ごめんな』
まだ言えずじまいの自分を許して欲しい。いつか、ちゃんと言える日が来たならば、その時は一番に土方に伝えよう。そう思いながら、海は土方を横抱きにして車に乗せた。
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