第191幕
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かつん、かつん、と革靴の踵を地面に打ち鳴らしながら佐々木へと近づく。
海が建物から出てきた時点で佐々木はこちらの存在に気づいていた。細い目を更に細くし、怪しげにこちらを凝視してくる佐々木に海はやんわりとした笑みを浮かべた。
『事は上手くいきましたか?』
「なんの事ですか?」
『なんの事?それを一番知っているのは貴方の方じゃないんですか?』
「さぁ?私にはなんの事だかさっぱり。それよりもお怪我はされてませんか?貴方は人質だったんでしょう?」
『いえ、まったく。あれぐらいの輩なら一人で何とかできますよ』
捕まえた攘夷浪士の相手など、赤子の手をひねるようなもの。ただ、今回はイレギュラーがいたせいで捕まってしまったが。
「そうですか。怪我されてないならなによりです。すみません、うちの愚弟がまたご迷惑を」
『あぁ、その件で話があるんですが』
「おや、なんでしょう」
佐々木との距離を詰め、海は佐々木の胸倉を掴んだ。突然のことに相手は当然驚き、目を見開く。
『お前、何考えてやがる』
「……何、とは?」
『鉄之助を潰すだけならこんな大層なやり方しなくたっていいだろ。お前、明らかに
一体何をしているんだ。そう問い詰めるように佐々木を睨む。海の眼力に佐々木はたじろいだが、海が求める答えは口にしなかった。
「海!!何やってるんだ!」
なおも問い詰めようとした海の元に近藤の叫びが届いた。声の方へ目を向けると、青ざめた顔をした近藤が立っていた。
「近藤局長がお呼びですよ、桜樹さん」
『……チッ』
佐々木を忌々しげに睨んでから手を離し、背を向けて近藤の方へと歩き出す。数歩進んだところで「あぁ、そう言えば」と佐々木が呟いたのが聞こえた。
「伝言を頼まれているのを忘れてました。貴方がよく知る人物からですよ。"最近、派手な動きばかりしてるがいいのか?身バレしたら迎えに行ってやるよ"との事ですよ」
閃光。
『てめぇ!!』
「さて、私はそろそろ失礼させてもらいます」
『待ちやがれ!佐々木!てめぇ、まさかッ!!』
閃光、迎えに行く。その言葉だけで佐々木が誰と繋がっているのかが分かってしまった。
去っていく佐々木を捕まえようとしたが、後ろから近藤に羽交い締めにされてしまって動けなくなり、海はただ、佐々木の後ろ姿を見送ることしか出来なかった。
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