第190幕
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「あれ?兄さん?」
『この状況を簡潔に説明しろ』
頭を抱えて項垂れていた海の横から顔を出した朔夜が、不思議そうに海の顔を覗き込んできた。
朔夜を責めるように軽く睨むと、朔夜は苦笑いを向けながら説明してくれた。
『で?なんでこうなるんだよ』
「わかんない。なんか勝敗が決まればなんでもいいみたい。さっきまでは普通に戦ってたんだけどね」
『あっそ。それよりも攘夷浪士の確保が先だ。あぁ、ほらチラホラ逃げ出してる』
股間を押さえてよちよち歩きの男たちがその場から逃げ出そうと階段へ向かっていく。あの遅さならなんら問題はないのだが、それでも気をつけなければ。
「それより兄さん大丈夫なの?」
『何が?』
「今まで人質だったんでしょ?怪我とかは?」
『してない。犯人の中に銀……』
銀時が居たからなんも心配することは無かった。と言おうとした海に朔夜が静止の声をかけた。
「ストップ。それ以上はいいや。なんか察したから。本当に兄さんは坂田さん大好きだね」
『今のくだりでなんでそうなるんだよ』
「自分で気づいてないの?」
驚きの目で見てくる朔夜に海は小首傾げる。何に気づいていないというのか。
「はぁ……これだから鈍感無自覚って」
『朔夜?』
「兄さん、どうせ坂田さんが居たからなんも怖くなかったとかって言おうとしたでしょ」
人質になったくらいで恐怖心なんてものは感じなかったが、銀時がいた事で安心したのは確かだった。だから海は隠すことも無く、朔夜の言葉に素直に頷いた。
「それってさ、兄さんが坂田さんのことを物凄く信頼してるからでしょ?あんな状況でも坂田さんがいるからなんも心配いらないって。怪我をすることもないだろうって」
『まぁ……俺が怪我するような事があれば……』
「坂田さんが怒る?」
『逆の立場であれば俺もそうだからな』
「あぁ、うん。なんか段々説明するのも恥ずかしくなってきたよ」
途中で話を止められて疑問だけが残る。朔夜に中途半端で止めるなと言ったのだが、朔夜はただ深いため息をするだけでそれ以上教えてくれることはなかった。
「(ほんとにこの二人は。互いに依存してることに気づいてないのかな。坂田さんは気づいてそうだけど……兄さんは……)」
話を終えてからというものの、朔夜から向けられてくる視線に海は気づいていたが、今は朔夜に構ってる暇はないと無視を決め込んだ。
上ではまだ土方と銀時が見廻組相手に奮闘しているはず。ならば、海たちがすべき事は逃げ出した攘夷浪士たちを捕縛すること。
被害を最小限に、なんて考えはもうない。暴れるだけ暴れてもらって、後で書類でもなんでも出してもらえばいい。
『朔夜、攘夷浪士どもを捕まえに行くぞ』
まだぶつぶつと何か呟いていた朔夜に声をかけて海は歩き出す。後ろから朔夜が慌てて追いかけてくるのを聞きながら、手錠を手にした。
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