第190幕
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『近藤さん!山崎!』
「海!無事だったか!」
「副長補佐!よくご無事で!」
階下には、バズーカを背負った近藤と山崎が待機していた。二人の姿を見つけた海はホッと安堵の表情を浮かばながら駆け寄る。
「怪我はないか!?」
『大丈夫です。それより、見廻組は何をしようとしてるんですか!』
「多分、鉄之助くんごと攘夷浪士たちを排除しようとしてるんだよ。さっき、副長が上に行ったけど会わなかった?」
やはりか、と海は一人納得した。佐々木にとって鉄之助はもはや弟でもなんでもない。視界に入るのも鬱陶しい程の存在になっている。土方の嘆願は本当に意味がなかった。その事が腹立たしくなり、右手を強く握りしめた。
『会ってない。行き違いになったか』
「そうか……海、鉄くんは……」
『人質のままだ。今はまだ攘夷浪士たちが抵抗してるから良いとしても、見廻組があいつらを殲滅するのも時間の問題だと思う』
「くっ……どうにかしないとだな」
近藤は恨めしそうに舌打ちをして屋上を見上げる。手元に刀があれば、海も上に残って鉄之助を助けるために動けたのだが、生憎と刀はどこかに捨てられ、銀時にその場から追い出されてしまった。
『(そういえば何かを落とすって言ってたか)』
下で受け取って欲しいと銀時は言っていた。何を受け取るのかは教えてもらえなかったが。
『……まさか、な?』
なんだか嫌な予感を感じて背筋がぞくりと震えた。まさかそんなはずは、と思いながら一歩、また一歩と海は窓枠の方へと近づいていく。
『山崎、ちょっと来てくれ』
「え?なんですか?」
もし、本当にそうであったら海一人では受け取ることは出来ないだろう。
頼むからそれだけはしないでくれよ?と願いつつ、海が窓枠から身を乗り出して空を見上げた時、それは降ってきた。
『こ……こんのバカ天パがぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
「ふ、副長補佐ぁぁ!」
「え、ええええ!?ど、どういうことですか!?な、なんで鉄くんが降ってくるんですか!?」
屋上から降ってきた黒い物体。それは攘夷浪士たちに拘束されていた鉄之助。鉄之助の腕を縛っていたロープを手に取って鉄之助を引き上げた。
『大丈夫か?』
「ほ、補佐ぁぁ!!!」
身動きが取れない状態で上から突き落とされれば、誰だって怖いはず。涙目になりながら海の胸元へ飛び込んできた鉄之助を優しく抱きとめ、不安を払拭させるように背中を撫でてやった。
「局長~!人質確保~!」
「よくここまでこらえたな。もう我慢は要らねぇ!大暴れしてやれ~!悪ガキども!」
鉄之助がこちらの手の内に戻ってきたのであればもう手加減は必要ない。近藤も上に向かってバズーカを放ち、屋上にいる土方を援護した。
「副長補佐?どこに行かれるんですか!?」
『今、上で土方が見廻組のやつらと交戦してるんだろ。多分あいつも……。その混乱に乗じて攘夷浪士たちが逃げ出すかもしれない。その前に逃げ道塞いで全員確保する』
「で、でも一人じゃ危ないですよ!」
丸腰の状態でどうするんだと山崎は海の手を掴んで止める。その手を海は振り払った。
『一人?そんな事ねぇよ、ここに連れてきたんだろ?あいつ』
「へ?」
『確保するのに何人も要らねぇよ。俺ともう一人居ればいい』
それだけ残して海はその場から離れた。上の騒がしさも段々と収まってきている。早く動き出さなければ。
それにはまず弟を探し出さなくてはならない。この騒ぎである、きっと何事かと思って駆けつけてきているだろう。近藤たちがいたフロアから一つ上の階へと上がった。
『総悟と一緒にいるとは思うんだが……その総悟が何処にいるんだかな』
目を離すとすぐにふらりふらりと遊びに行ってしまう二人だ。どうせ今頃、そこら辺で暇つぶしと称して何か悪さでも……。
と、ふと目に入った光景にあんぐりと口を開けた。天井にぽっかりと開いた穴から降ってきた攘夷浪士たちをどっから持ってきたのかわからない三角木馬の上に落とし、バットでフルスイング。
バットで打たれた先に待ち受けていた見廻組の女性隊員。そちらも攘夷浪士に向けて卓球のラケットを振りかぶっている。
もう何も言うまい。
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