第189幕
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『で?人が仕事を放り投げてまで探しに来てやったってのにお前はこんな所で何してるんだ?鉄之助』
「ふ、副長補佐……!」
周りを探し回ってやっと見つけたかと思えば、鉄之助はガラの悪い連中を前にして地面に倒れていた。
『土方に教えてもらわなかったのかよ。護身術』
何のために何時間と稽古をつけてもらったのか。それを今発揮出来ずにいつ使うんだ。だらしなく地に伏している鉄之助に呆れ、助けるよりも先に説教じみた言葉が並んだ。
『こんなヤツらにのされて恥ずかしくないのか』
「す、すみません!」
『謝るなら土方に言え。あれだけ教わっといて何一つ身についてないなんて笑い話にもならねぇよ』
「っす……」
段々と冷たくなっていく海の言葉に鉄之助は萎縮して何も言えなくなっていく。それに対して尚も海が文句をつけようと口を開いた時、横から邪魔が入った。
「あ?なんだ?お仲間さんか?悪いけど、コイツ借りていくから」
鉄之助をのした奴らの一人が一歩、鉄之助へと近づく。
「副長補佐!逃げてください!これは……自分の責任なんです!」
どうやらこのガラの悪い連中と鉄之助は知り合いらしい。確かに言われてみればそんな感じがする。最初に屯所に来た時の鉄之助の風貌は、目の前にいる連中と似たような感じだった。
昔の付き合いの縁が切れず、今もこうして接触があった。というのであれば、鉄之助ごと斬ることも出来るのだが、今の状況はどう見ても鉄之助が襲われている状態。そして鉄之助は上司である土方の小姓。
海がするべき事はただ一つ。
「副長……補佐?」
『悪いが、うちのもんが襲われてるっていうなら手を出さないわけにはいかない。襲う理由がなんであれ……お前ら"真選組"に手を出した罪は重いぞ?』
倒れている鉄之助の前に立ち、海は腰にある刀を掴む。刀身は出さずに威嚇の為に相手を睨めば、取り巻きの一部は恐れおののいてその場から数歩後ろへと下がった。
「はっ、こんな町中で人を斬ろうっていうのか?今時の警察ってのは見境ないんだなぁ?」
『斬っても構わない。お前らが大人しく捕まらないのであればな』
「捕まる?なんで俺たちが。そいつが勝手に転んだだけだぜ?」
ゲラゲラと笑う声が通りに響く。後ろからは悔しそうに呻く鉄之助の声が聞こえた。
『……そうか』
「あぁ。だから副長補佐さんも大人しくお家へ帰ん──」
『それは悪かったな。鉄之助が勝手に転んだのであれば仕方ない。だが、人の持ち物を踏みつけている事は許されないことだよな?器物損壊罪としてお前を逮捕する』
リーダー格らしき男が海の肩に触れようとした瞬間、海は相手の腕を取って背負い投げをかました。
鉄之助の隣に仰向けになって倒れた男は、鉄之助が落とした手紙を踏みつけていたのだ。海と話していた間も踏みにじるように足を動かしていたのは見ていた。それは立派な犯罪。
『なにか文句はあるか?』
倒れた男は意識はあるが、地面に強く腰を打ち付けたせいですぐには立ち上がれない。下から海を恨めしそうに睨むだけで、何も言い返しては来なかった。
『お前らもこうなりたくなれば早々にここから去れ。今なら見逃してやる。だが、次はねぇからな』
あたふたしているヤツらに声をかけ、胸ポケットから携帯を取り出す。鉄之助は無事見つかった、それと一人オマケを連れて帰るという主旨の連絡をしようと耳に携帯を押し当てた。
「ね、お兄さん」
呼出音を黙って聞いていた海の真横から声がかかる。そちらへと顔を向けると、銀色の髪が見えた。
「ちょっと眠っててくんない?」
『ぎ……』
「いい子だからさ、ね?」
銀時、と呼ぶよりも先に海の腹部へと重たい一撃が入った。手から携帯が滑り落ちていく。地面に転がった時には通話が繋がったらしく、携帯から土方の声が聞こえたが、遠くなっていく意識ではそれに答えることが出来ない。
「ごめんな、海」
『あと……で、』
「うん。ちゃんと説明する。だから今は眠ってて」
地面に倒れる前に銀時に抱えあげられて身体が浮く。そしてそのまま海の意識は完全に途切れた。
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