第189幕
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「遅ぇ」
『なら見てくればいいだろ。いつまでそんな所で貧乏ゆすりしてるんだよ、鬱陶しい』
部屋で書類整理していた海の元に来たのは土方だった。無遠慮に襖を開け放った土方はどかっと座ったかと思ったらブツブツと何かを言い始めた。
最初こそは無視していたが、静かな部屋で聞こえてくる土方の独り言に痺れを切らし、持っていた筆を置いた。
『別にそんな難しい頼み事したわけじゃねぇんだろ?ならすぐ帰ってくんだろ』
「それにしても遅ぇんだよ。アイツに手紙を出してこいと追い出してから三十分以上経ってる。お前、ここから近くのポストまで何分でいけると思ってんだ」
『……五分』
屯所から一番近くのポストまでは歩いて五分の近さ。どれだけ遅く歩いたとしても、行って帰ってくるのに十五分とかからない。そんな距離なのにも関わらず、どれだけ待っても帰って来る気配がない。
『はぁ……』
溜息を零しながら海は重い腰を上げた。衣紋掛けに掛かっていた隊服の上着を手にし、腰に刀を添える。土方の横を通り抜けて縁側へと出た海の背中に土方の声がかかる。
「あ?どこ行くんだよ」
『散歩。今日ずっと部屋にこもりきりだったんだよ。少しくらい外の空気吸わせろ』
「庭でいいだろうが」
外に行く必要が何処にあるんだと言ってきた土方を海は軽く睨む。その視線の先はもくもくと立ち上る煙。
『煙草臭ぇんだよ。ここは』
それだけ残して海は縁側を歩いていく。下駄箱にある自分の靴を引っ張り出して履き、屯所の門前に立っていた隊士に声をかけてから外へと出る。
『めんどくせぇことしやがって』
文句を垂れながら海は左右の道を見渡す。通りに目当ての人間の姿を捉えることが出来ず、また一言二言文句を口にした。
ポストの場所がわからずそこら辺を徘徊しているのか。それともポストに行き着く前に厄介事に巻き込まれたか。
前者ならいいだろう。ポストの場所を事前に聞いておけと注意して終われる。だが、後者の場合はかなりめんどくさくなる。仮にも佐々木家の子息なのだ。変なことに巻き込まれて死ぬようなことがあれば、真選組の落ち度になりかねない。
『どっから探すかな』
漸く本人がやる気を出してきたのだ。横からつつかれたせいで彼の努力が水の泡になるのは見ていられない。
そう思った海は鉄之助を探すべく走り出した。
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