第189幕
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「まぁ、正確に言うと誤認逮捕ではないですからね。四捨五入したら犯罪者ですからね、この人」
「そうそう。坂田さんは立派な犯罪者ですから。だから逮捕されても仕方ない人ですよ」
総悟の言葉にうんうんと深く頷く朔夜。その頭を思い切りひっぱたいて黙らせる。痛そうに頭を抱えながら涙目で睨んできた朔夜を睨み返した。
「人聞きの悪いことを言うな。人間なんてみんな四捨五入したら犯罪者だ、バカ野郎」
「坂田さんはそうかもしれないけど、兄さんは違う!坂田さんと一緒にしないでください!」
「何言ってんだよ。アイツだって俺と似たようなモンだろうが。アイツは表立ってやってないだけで、裏ではとんでもねぇくらい黒いことやってんだぞ?」
半分嘘だが。
海が黒いことをしているところなんてほぼ見た事がない。もしかしたら銀時の知り合いの中で一番まとも……いや、そんなことも無いか。だが、そこら辺のヤツらに比べれば真っ当な性格だと思う。なんせそうなるようにしたのだから。
「嘘だッ!!!!」
「やめときなせェ朔夜。その言い方は鉈振り回してる女と同じになっちまう」
「鉈?」
「あ、なに?ドS王子知ってんの?おはぎに針入れちゃう?」
「あれは主人公の妄想でさァ」
「そうだっけ?」
もう随分と見ていないから覚えていない。あのアニメを見たのは何時だったか。神楽が面白い面白いと言って見ていたのを横で見ていたくらいだったから、内容もうろ覚えである。あれも長いんだよなぁ、なんてアニメの内容を思い出していた銀時の耳に佐々木の咳払いが聞こえた。
「仲良くお話しているところ申し訳ありませんが、私も忙しい身なので。逮捕してしまった詫びとして、慰謝料、スクーターの修理費、そのほか諸々、いくらでも出しますからお好きな額をこちらのチラ裏にでも書いておいてください」
かさり、と佐々木が取り出したのはスーパーの特売が書かれたチラシ。その紙に大きくいちご牛乳の値段が書いてあり、その安さに目が止まった。この男はいくらでも金を出すと言ったよな?それならここで多額の慰謝料をふんだくっておけば、いちご牛乳が沢山買えるのではないか?
そう思ったが、書く場所がチラシの裏。そんな粗末なものに書いて本当に請求出来るとは思えない。
「あとでダラダラとたかられても面倒ですからね」
「総悟、慰謝料請求ってあんな紙でいいの?」
「そんなことありやせん。ちゃんとした請求書の作成されるはずでさァ。相手は出すつもりないってこと」
「なら、兄さんにもらってきたもの出そうか?」
後ろで総悟と朔夜が話しているのが聞こえ、そちらへと目を向ける。朔夜が胸元から出したのは一通の茶封筒。中から出した紙を朔夜は総悟へと見せる。その時見えたのは"請求書"という文字。
「何かあったらこれを出せって兄さんが言ってたんだ」
「へぇ。海さんがねぇ」
文面を見た総悟はにやにや笑いながら銀時を見る。これを使いますか?と無言で紙を指差す。銀時は喉から手が出るほど欲しいと思ったが、請求書から目を逸らした。
「使わないですか?」
「……いい」
「スクーター壊れたならちゃんと直しておけって兄さん言ってましたよ?事故起こしたら大変だって」
「アイツに言っとけ。二度とバイクに乗るなって」
結局、海からの請求書は使わずに終わった。総悟と朔夜は先に帰り、その場には銀時と男が残った。
「貴方、真選組副長補佐の桜樹さんと面識がおありなんですか?」
「あ?なんだよ。あっちゃ悪いのかよ」
「いえ。あの様な方が貴方みたいな人と関係があるなんて信じられなくて。いえ、貴方のことをバカにしているわけではありませんよ。あの人が異質なだけですから」
「何が言いてぇんだよ」
「いえ、別に。私も彼と仲良く出来たら、と思っただけです」
"仲良く"の部分について深く話を聞きたい所だが、男はスタスタと銀時を置いて歩いていく。仕事を紹介してくれるらしいので、銀時はその後を大人しくついていった。なんとなく嫌な感じを胸に抱きつつ。
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