第188幕
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『なんなんだ、あいつら』
血相変えて走っていく隊士の後ろ姿を見送った海は意味がわからないと首を傾げる。一体何を慌てているのか。鉄之助を見てからというものの、あの二人は挙動不審だった。もしや、鉄之助について何かしら話をしていたのか。それを本人に聞かれたからあんなにも狼狽えているのか。
「さぁな。まぁ、鉄之助の態度が180度変わったっていうのもアレなんだろ」
『そりゃそうかもしんねぇけど……。ただちょっと遊惰放逸をやめただけだろ。あんなに困惑する理由にならねぇよ』
今まで好き勝手していたのを止め、今すべきことを鉄之助に叩き込んだだけの事。それは泣き言を漏らした隊士たちをシバくのと同じやり方。そんなのほかの隊士たちは知っているはずだ。かつてはあの二人も海にシバかれた組なのだから。
「お前のやり方は乱暴だけどな。よく、アイツが逃げ出さなかったじゃねぇか。俺はてっきりお前に怯えて逃げ出すと思ってたんだがな」
『俺が逃がすとでも?』
顔色一つ変えずに無表情で土方の揶揄に答える。土方は口元をひくりと引き攣らせながら「あぁ、お前はそういうヤツだったな。聞いた俺が馬鹿だった」と頭を抱えた。
『それよりもどうするんだ?』
「何をだ」
『あの見廻組の局長。どうもきな臭い。腹違いの弟といえども、あんな言い方あるかよ』
同じ弟がいる身の海からしたら憤怒を覚えるほどのもの。確かに鉄之助のあの怠惰は目に余る所があるが、今はこうして己の態度を改めている。海たちによって立ち直ることが出来たということもあるのだろうが、元の原因はあの兄である佐々木のせいなのではないだろうか。
『俺としては、鉄之助があぁなったのは少なからずアイツのせいでもあると思うけどな』
「そうかもしんねぇが、佐々木家のことなんざ与り知らねぇことだ。俺たちにはなんも関係はない」
だからこれ以上、鉄之助とその兄の事を詳しく知ろうとするな。そう言って土方は海に牽制をかけた。それでも海は黙りこくって考え込んでいたが、土方に頭を雑に撫でられて思考が止まった。
『おい……』
「書類。まだ残ってんだろ?それ早く出せよ。この後、パトロール入ってんだろお前」
『あっ、忘れてた』
「忘れんな。書類が終わらないなら俺んとこ持ってこい。今日はちゃんと寝ろ」
ここ連日の徹夜を指摘されて海はそろりと土方から目を逸らす。バレないだろうとここ二日ほど徹夜していたのだが、どうやら土方にはバレてしまっていた。
「寝ろよ?」
『……わかった』
「なんだその間は。てめぇ、夜中見に行くぞ」
『俺は子供かよ』
夜更かしを怒られている小さい子供のような気分に海は吹き出し笑う。
「お前がちゃんと寝るなら親父でもなんでもいいわ。今日はちゃんと寝ろ、副長命令だ」
『親父でもいいとか言っときながら副長権限持ち出してくるのかよ』
おかしなヤツ。とけらけら笑いながら海は自室へと歩き出す。土方も副長室へ戻るために海の横を歩いた。
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