第187幕
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『こいつらパトロールに連れてくのかよ……』
「近藤さんからのお達しだ。ずっと屯所に缶詰じゃ鬱憤も溜まるだろうってよ」
『こっちの方が鬱憤溜まってんだよ』
門の前にあるパトカーから聞こえてくるジャカジャカ音に眉をひそめ、うるさそうに片耳を塞ぎながら土方をギロッと睨んだ。土方も海の言い分を分かっているのか、鉄之助とその取り巻きを鋭い目で睨みつけていた。
『行くって言うなら止めねぇけど。気をつけてな』
「何言ってんだ。てめぇも一緒に来い」
『は?パトカーに乗れねぇだろ』
土方と鉄之助、そして取り巻き二人を乗せたら海の乗る場所はない。それでどうやって連れていくというのか。
「おい、山崎」
「はい!なんですか?副長」
名を呼ばれた監察の山崎がどこからともなく現れる。ひょこりと出てきた山崎の手にはあんパン。また浪士の監視途中かなにかだったのだろうか。
「アレ持ってこい」
「アレ……ですか?」
「あぁ。丁度いい機会だ。こいつに使わせろ」
「わかりました!」
山崎は土方に指示されて顔を引っこめる。何を持ってくるのかと海は訝しげに思いながら、山崎が戻ってくるのを待った。
「副長!持ってきました!!」
「海、お前確かバイクの免許持ってたよな」
『一応……』
山崎が持ってきたのは灰色のカバーを被った何か。土方の口ぶりと、山崎の持つハンドルを見て、喉がひくっと鳴った。
『いや……待てよ。確かに乗れるっちゃ乗れるが……』
「前々から松平のとっつぁんに言われてたんだよ。海にバイクを渡してやれって。車だとお前すぐに道外れて迷子になるだろ」
『それとどういう関係があんだよ』
「バイクなら小回りが効く。足で通ってる道を走れるからな。間違った道を行ってもすぐに引き返せる。コイツならお前でも大丈夫だろ」
土方の手によってカバーが外され、海の前に真新しいバイクが出された。
「すごいですよ!凄くかっこいいですよ!!」
青を基調としたバイク。常に手入れがされていたのか、ボディはキラリと輝いていた。
『……乗りこなせるかわかんねぇよ』
「とりあえず乗って走れればいい。別にウィリーしろと言ってるわけじゃねぇ」
『でも……』
「乗ってみろ」
とんっと土方に背中を押されて一歩、バイクと近づく。免許を取ってから一度もバイクには乗っていない。免許を取ったのだって、松平に「バイク乗れたらかっこいいよなぁ?」と何故か脅されて取りに行っただけだった。乗るつもりなんてさらさらなかったのに。
『バイクなんて……』
「ささ、副長補佐!」
山崎にヘルメットと鍵を渡され、海はバイクに跨った。
「様になるな」
「副長補佐かっこいいですね」
「……だな」
ヘルメットを被り、鍵を差し入れてエンジンをかける。バイク特有の振動が全身へと伝わる。久方ぶりの震えに懐かしさを感じるも、まだバイクを乗りこなしたいとは思わなかった。
「ゆっくりでいいから走ってみるぞ。俺が先導してやる。何かあったらインカム飛ばせ」
『ん』
パトカーに乗り込もうとしている土方にこくりと頷き了解の意を示す。パトカーの運転席と後部座席からキラキラした視線を受けたが、海は全て無視した。
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