第176幕
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「ということなんだ。海よ、手を貸してはくれまいか?」
『手を貸すのは構わねぇけど、お前まずここがどこだか分かってるのか?』
「うん?真選組屯所だろう?なに分かりきったことを。もしかして仕事のし過ぎで疲れているのか?ダメだぞ?ちゃんと休息は取らないと。休む時はちゃんと休みなさいとお母さん言ったでしょうが!」
『誰がお母さんだ誰が』
はぁ、とため息をついた海に説教じみた言葉を並べる桂。そんな桂を呆れた目で見た。
ここは真選組屯所にある海の自室。桂がここに来るまでは書類を片付けていた。
あと数ヶ月で年末になる。それを見越し、今年分の事件ファイルなどを整理していたところだった。
もう少ししたら昼飯でも、と思っていたところで山崎に声をかけられた。襖を開けて庭にいる山崎に返事をすると、海に客が来ていると言われた。
また銀時たちなのかと聞いたが、山崎は頭を横に振った。見知らぬ男が海を呼んでいる、と。
屯所の門で待っている相手の元へと顔を出せば、そこには下手な変装をした桂が立っていた。指名手配されているはずの桂が平然とそこに立っていて、海は唖然とした。
知り合いですか?と隊士に聞かれた海は一つ頷き、桂を連れて自室へと戻った。その間、何人かの隊士とすれ違ったのだが、誰一人として連れている人間を桂だとは疑わなかった。
『(こんなんでやっていけんのかよ)』
白昼堂々と屯所に現れた指名手配犯。それに気づきもしないで海を呼びに来た山崎。堂々過ぎて疑わなかったのか。それにしても警戒が無さすぎるだろう。かといって友人である桂を指名手配の人間だと言って追い出す訳にも行かず、黙って屯所の中へと入れてしまった。
副長補佐として有り得ない行動なのだが。
『で?何があったんだ?』
「エリザベスが居なくなったんだ」
『エリザベス?』
「あぁ。気づいたら居なくなっていた」
エリザベス。いつ頃からかは忘れたが、いつの間にか桂のペットとしてそばに居た白い布を被ったヤツ。人間なのか天人なのかと一度気になった事があったが、エリザベスに"そんな小さいことを気にするな。男は大きい器で生きろ"と謎の諭しを受けて考えるのをやめた。
そのエリザベスがここ最近桂の前から居なくなった。家出でもしたのだろうか、それとも迷子になっているのではなかろうかと心配した桂は海を頼った。
共にエリザベスを探して欲しいと。
『最後に見た日はいつなんだ?』
「それが分からないんだ」
『は?なんで。だっていつも一緒にいたら分かるだろうが』
「その辺の記憶が曖昧なんだ。いつエリザベスが居なくなったのか、エリザベスと最後何をしていたのか。思い出せないんだ」
頭を手で押さえて唸る桂。何馬鹿なことを、と思ったのだが、桂は真剣な眼差しで海を見つめる。その目が嘘をついているとも冗談を言っているとも思えず、海は溜息をつきながら立ち上がり、立てかけていた刀を腰へと差した。
「海?」
『桂が覚えていなくても、町の人間は覚えてるかもしれないだろ?エリザベスが桂の元から離れる前の目撃情報を探すぞ』
こんな所で嘆いているよりも、外に行ってなにかした方がいい。
桂を引きずるようにして海は屯所から出た。
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