第187幕
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「佐々木 鉄之助?」
「あぁ、幕臣のうちでもエリートばかり輩出している名門、佐々木家のご子息だ。だが、どうしたことか彼だけは職に就かず、悪さばかりしている穀潰しらしくてな。手がつけられないと、うちで預かることになった」
「要するに世間体を気にした親に見捨てられた落ちこぼれのボンボンですか」
『だからと言ってなんでここで預かることになったんだよ。いつからここは託児所になったんだ。言っとくが、ここは性格がひん曲がった奴を更生させる施設でも、見捨てられて可哀想だからと甘やかす場所でもねぇからな』
「なんだ?今日はやけにトゲトゲしいじゃないか、海」
ふんっと鼻を鳴らして鉄之助を見つめる海に近藤は首を捻る。いつもより口調の荒く、怒っているようにも見える海の態度に近藤は不思議そうな顔を浮かべた。
「お前、また徹夜しただろ」
『……してねぇよ』
「嘘つくんじゃねぇ。お前がそんなに荒れんのは徹夜した時か、書類に追われてる時だろう」
『うるせぇ。分かってんだったら早く書類を減らせよ。おい、総悟。お前も自分の分は終わらせろよ』
土方の冷めた言い方にぷつりと何かが切れる。副長補佐として、土方のバックアップをしなくてはいけないのは分かっている。だが、その量が尋常ではない。
元々、真選組に在籍している隊士たちの行動は褒められたものではない。攘夷浪士を捕まえる為にと色々と手荒い事をしてきている。それこそ近隣住民から批判を受けるほどに。
海の元に回ってくる書類の中にはクレーム対応の物もある。それくらいなら文面を見て処理してしまえばいい。文句だけなら、であるが。
ここ最近多くなってきたのは旅館などに潜伏している攘夷浪士を捕まえた時の書類。捕まえるのに必死になって、旅館の備品などを破損。その損害賠償の書類が海の頭を悩ませていた。
「海さんが書類やった方が早く終わりまさァ」
『お前……いい加減にしろよ?』
海の手元にある書類はほぼほぼ総悟の所から流れてきたもの。総悟が書類から目を背けるせいで、溜まりに溜まったものだった。中には提出期限が切れているものもある。それに関しては近藤に報告済みであり、きっと松平の耳にも入っていることだろう。
先方には謝罪の文は送ってある。返しは未だにないが。
「そ、それよりもだ!彼の配属についてなんだが!」
総悟へと微々たる殺気を向けた時、海と総悟の間に割って入るように近藤が身体を動かした。鉄之助を指差して「どうする?ねぇ、どうする?」としつこく聞いてくる近藤に毒気が抜かれた。
『俺はパス。そんな余裕ない』
「え。海が一番適任だと思ったのに……」
『どこがだ。あんな舐め腐った野郎、一時間ともたねぇよ。あいつのことは近藤さんたちに任せる。俺は先戻るから』
またな、と一言残して海は近藤たちに背を向ける。後ろで近藤が何か言っていたが、全て無視して部屋に戻った。
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