第186幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
かたんっ、と車体が揺れて海はゆっくりと瞼を持ち上げた。
いつの間にか眠っていたらしい。小さく欠伸をして身体を起こそうとしたら、何かがずるりと落ちてきた。
「あ?やっと起きたか寝坊助」
「ゆっくり寝れましたか?海さん」
助手席に座っている土方が眉間に皺を寄せ、後部座席に寝転がっていた海を睨むようにみた。いつも着ている隊服の上着を着ていない土方に疑問を抱いたが、その答えはすぐに分かった。
「土方さん、そんな言い方ないじゃないですか。海さんが寒くないように上着まで貸しておいて」
「うるせぇ!てめぇは黙って運転してろや!」
あぁ、さっき落ちたのは土方の上着だったのか。
足元に落ちてしまった上着を手に取り、ついてしまったホコリを手で払って土方へと返した。
『悪い。ありがとな』
「べ、別に礼を言われるほどじゃねぇよ!テメェが寝ながら寒いとかほざきやがったから仕方なく貸してやっただけで、別に!」
「はいはい。寝言で寒いって言ってるの聞こえて可哀想だったから貸したんでしょう」
「うるせぇって言ってんのが分かんねぇのか総悟ォ!!」
「ここは素直に言っといた方がいいですぜ?海さんはもう他の野郎に取られちまってるんですから。海さんの気持ちを土方さんの方に傾けるにはちょっとやそっとの事じゃダメでさァ」
「お前は本人前にして何言ってんのォォ!?」
また喧嘩でもしているのかと海は呆れながらため息をついて窓の外へと視線を移す。今日も賑やかなかぶき町は何も問題なさそうだった。
これなら何事もなくすぐに帰れそうだ。帰ったら朔夜に稽古をつけて、溜まっている書類を片付けて──
『……うん?』
屯所に戻った時のことを考えながら外の景色を眺めていた時、見知った顔が目に入った。何故かスーツを着ている新八と神楽。その横にはダンボールらしきものを身につけて?いる長谷川の姿もあった。
『こんなとこで何して……っ!』
何しているんだ?と言葉にしようとしたが、突然の衝撃によって言葉を飲んだ。パトカーが何かにぶつかって急停車した。海は助手席に頭を強く打ち付けてしまい痛みに悶える。
「大丈夫ですかィ?海さん」
『何があったんだよ……!』
「いや、なんか……轢かないとダメそうなのがいやして」
『人を轢いたのか!?』
まさかさっきの衝撃は人を轢いた事によるものなのか。海は血の気が引いていくのを感じながら、ドアを開けて外へと飛び出した。もし大怪我をしているのであれば早く救急車を呼ばなくては。
「人というよりゴミみたいなヤツですね」
総悟が車の中で何か言っていた気がしたが、海はそれを聞かずに車の前へと駆け寄った。
『大丈夫ですか!?』
「これが大丈夫に見えたら病院とかいらねぇよなぁ」
道端にぐったりと倒れている男二人のもとへと走り寄って膝を折り、相手の肩へと優しく手を乗せる。白いスーツを着た男がちらりとこちらを見た時、互いに目を大きく開いた。
「海!?」
『銀時?なんでお前……』
こんなところでなにをしているんだと聞くよりも先に、銀時は海の前に正座して頭を下げた。
「ち、違うから!これは仕事でやってただけだから!!決して浮気とかじゃ!!」
『は?』
土下座しながら必死によく分からない言い訳をしてくる銀時に海は首を傾げる。ただ、浮気という単語に眉がぴくりと上がり、海の機嫌は少しずつ悪くなっていった。
「海……さん?」
『その話。詳しく聞かせろよ』
にこり、と笑っているのにも関わらず、銀時の顔は真っ青になっていく。隣で見ていた近藤も何故か身体をガタガタ震わせながら銀時と海を交互に見ていた。
.