第185幕
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「じゃあ、あれ全部嘘だったのかよ」
『そういう事になる』
海から話を聞いた銀時は気の抜けた顔をしながら俯いた。深く息を吐いて頭を抱える銀時を黙って見つめる。
屯所の前で話した内容は全てお妙と九兵衛が作った話だと説明して一言謝罪をも添えた。ほっとしたような顔をした銀時はそのまま項垂れて何も喋らない。その反応に今度は海の方がそわそわとしてきた。
「……じゃあ、なに?俺はずっと海に騙されてたってこと?」
『そう……なる』
「ふーん」
銀時の言葉に棘を感じて身構える。お妙たちから持ちかけられたあの話を安請け合いしすぎたが、と今更後悔していた。
『悪かった。嫌な思いさせて』
銀時に向けてゆっくりと頭を下げる。今回の件はやり過ぎたことは自覚している。銀時の酒癖を直すためとはいえ、冗談とは思えない様なことをしてしまった。そのせいで銀時には辛い思いをさせてしまったのだ。ここは正直に謝らなければ、と海は素直に頭を下げた。
「……本当に俺は海を無理矢理抱いてねぇんだな?」
『してない。断じてそんなことは無かった』
再度、確認してくる銀時に頭を上げずに答える。
「そ、なら……よかった」
『え?』
ふざけた嘘をついてんじゃねぇ、と怒られるかと思って覚悟していたのに、海に向けられた声はとても優しいものだった。その声に海は驚き頭を上げる。視界いっぱいに見えた銀時の顔は、怒りではなく笑顔。
「よかった。海に無理させてなくて」
『無理は……しなかった。だって銀時、約束守ったから……』
「約束?」
『久しぶりで身体がしんどいから一回だけにしてくれって頼んだんだよ』
「マジ?俺、一回で済ませたの!?」
こくりと頷くと、銀時は益々驚いた。「よく我慢したな俺……」と呟いているのを聴きながら、海はこの状況を必死に理解しようと頭を働かせていた。
「あー……なんだ。確かに嘘つかれた事についてはムカついたけどよ、俺の酒癖のせいだって言うなら……その、あの」
『怒らない……のか?』
「まぁ、な?どうせ断れなかったんだろ?アイツらの話」
うっ、と唸ると銀時はやっぱり、と苦笑いを浮かべる。グイグイ来るお妙たちに海は断りきれず手を貸した。結局のところ、銀時の酒癖を直すためというのを口実に、銀時が海に嫌われて落ち込む姿が見てみたいというお妙の戯れだったのだ。
『ごめん』
「いいよ。アイツらには後で言っておくから。なぁ、それよりさ」
『うん?』
歯切れ悪く呟いた銀時に海は小首傾げる。
「久しぶりだからよ。その……」
『なんだよ』
「抱きしめさせてくんねぇ?」
今まで不安でたまらなかったんだから。と消え入りそうな声で呟いて腕を広げる。海は躊躇うことなく銀時の胸へと飛び込み、背中へと腕を回した。
「海?」
『それはこっちの……』
「あー、なるほどね。お前も不安だったのね」
『ごめん、』
「いいよ、もう大丈夫。だから、もう少しこのままな?」
背中に回った腕は離さないようにと力が込められる。久しぶりに感じた体温に身を委ね、海は目を閉じた。
「海、大好き」
『俺も……すき』
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