第185幕
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『これでいいのか?』
銀時が去っていったのを確認してから、海は近くの電信柱へと目を向けた。そこの陰に隠れるようにしてこちらを見ていたお妙と九兵衛が嬉々として駆け寄ってきた。
「凄かったわ!海くん!」
「あぁ、すごい演技だった!」
凄い凄いと褒めてくるお妙と九兵衛にため息を零す。
涙を袖で拭い、海は銀時が去っていった方を見つめた。
『(やりすぎた、か?)』
最後に見えた銀時の表情はとても酷かった。自分がこんな顔させているのだと思ったら今すぐにでもネタバラシしてやりたかったが、そうするわけにもいかず、海はお妙たちに言われた通りのセリフを吐いた。
これは銀時の酒癖を直すための芝居だ。
あの日、酔っ払った銀時は店内を荒らしに荒らした。物を壊したのは銀時だけでなく、酒に弱かった月詠も銀時と共に店の備品を破壊した。
その損害はお登勢と海で支払われている。それを重く見たお妙たちが、銀時に断酒させようと言い出したのだ。
作戦の一つ目はあの日あの宴会にいた女性陣に銀時が手を出したという嘘。お妙たちの見事な演技に銀時は信じ込んだみたいだった。
そして今が二つ目の作戦。恋人である海からキツい一言を言われれば、あの銀時でも堪えるだろうということ。
『(それにしても、なんだよなぁ)』
ちらりとお妙と九兵衛の方を見やる。二人は楽しげに話をしていて、海が口を挟む余地はなかった。
事前にお妙に銀時とする話の流れについて話し合いがあった。台本だといって渡された紙を見た時、海は驚愕し、何度も目を瞬かせた。
にこりと笑うお妙に冷や汗を垂らし、海は苦笑いを浮かべることしか出来なかった。
『(……見られてた……わけではないはずなんだけどな)』
台本にあったものは、あの日トイレで銀時としたことの続きみたいな内容だった。
確かに銀時とはトイレでしていた。一回だけ、というのもちゃんと約束は果たされた。台本では脚色されていて、一回だけでなく何度も銀時に付き合わされた、という話の流れになっている。最終的には海が泣いてやめてくれと頼んでいるのに銀時がやめず、半ば強引に行為を続けたというもの。
後半はお妙の妄想だとしても、前半部分はその場で見ていたかのような正確さだった。
『(女性ってのは怖いな)』
ぼけっと空を見上げる海の耳にはまだ二人の楽しげな声が聞こえている。これで銀時が酒をやめればいい、まともになればいいと話している中、海は銀時にどうやって真実を教えるべきかと悩んだ。
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