第185幕
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「そ、それで……?」
ダラダラと冷や汗を垂らしながら銀時は続きの言葉を待った。
気分的には死刑宣告を待っている人間のようだった。早く教えて欲しいと思う反面、もうそれ以上聞きたくないという思いが交差する。いや、出来ればこれ以上自分の失態を聞きたいとは思わない。忘れてもらえるのであれば何でもしようとまで思うほどに。
でも、きっとそんな事は聞き入れてはもらえないだろう。こんなに怒った海では。
『本当にお前覚えてないのかよ』
「す、すんません」
宴会の翌日、自分が酔った勢いでしでかしてしまった事。あの日、あの場所にいた人間に手を出してしまったという話。銀時には全く覚えがなく、全部その場にいた人間から聞いたものなのだが、誰もが真剣な顔で言うものだから信じざるを得ない。
それでもと一縷の望みをかけ、銀時は海がいる真選組屯所へと出向いていた。
山崎に声をかけて海を連れてきてもらい、あの日何があったんだ?と問いかけると、海は目を大きく見開いた後、悲しそうな表情をした。
"何も……覚えてないのか"
そう言った海は切なそうにしてから銀時を睨みつけた。もうその顔に悲哀の色はない。あるのは怒り。
『呆れて何も言えねぇわ』
「ほ、ほんとに悪かったって!まさか俺、お前にも何かしたの!?」
お妙や月詠、九兵衛と猿飛の女性陣に手を出したように、海にまで何かしてしまったのか。別に海とは付き合っているからナニをしたとしても多少なら許されるはず。だと思う。
『お前のその緩いイチモツどうにかして来い。話はそれからだ』
「ちょ、ちょっと待てって!」
銀時をキツく睨んでから海は背を向けて屯所の中へと戻ろうとした。今ここで海を帰してしまってはきっと二度と口を聞いてくれなくなりそうで、銀時は咄嗟に海の手を掴んで引っ張った。
『痛っ』
「わ、わり」
無意識に力が入ってしまっていたのか、海が痛みに顔を歪める。その顔を見て胸が痛んだ。傷つけるつもりはなかったのに。謝った声はか細く、海にちゃんと届いたのか心配になった。
『お前は……!あの日もそうやって無理矢理したんだよ!!』
「え……?」
銀時の手を振り払い海は叫んだ。その言葉の意味が一瞬分からず、銀時は間抜けな顔を晒した。
無理矢理した。何を?と聞かずとも分かった。自分は海をトイレに連れ込んだ。そこで事をしていたのは海に聞いた。途中までは同意の行為だったのだろう。恥ずかしそうに顔を赤らめながら説明してくれた海が可愛かったのは覚えている。
でも、今海から感じられるのは憤怒。そして微々たる殺気。
それから聞かされた話はあまりにも酷く、本当に自分がしてしまったのかと聞いてしまいたくなる程のことだった。
それが出来なかったのは、目の前で海が目に涙を溜めていたから。
これ以上、嫌な思いをさせてはいけないと判断し、銀時は一言謝ってから海の前から立ち去った。
「ごめん、海。酷いことしてごめん」
屯所の前で立ち尽くしている海を一度振り返ったが、海はこちらを見ずにただ地面を見つめていた。
銀時を拒否しているように見えた姿に、銀時は胸が張り裂けそうだった。
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