第175幕
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「大丈夫なんですか?お連れの方々……」
部屋の隅に寄せた六人を訝しげに見つめてから参列者は銀時たちへと声をかけてきた。
「あっ、いえ、ちょっと正座で足が痺れちゃったみたいで」
「足が痺れたというか白目むいてますけど……」
「元々四六時中白目むいてるおちゃめな連中なんで、休んだら元に戻ると思うんでお構いなく……」
参列者は青ざめた顔をした銀時と土方を怪しげにじっと見つめたあと、これは関わってはいけないと察してそれ以上追求しなかった。
参列者からの質問攻めから解放された銀時たちは定食屋のおやじの遺影の方を見やる。そこにはハードボイルドと化した定食屋のおやじ。その手の中には近藤たちの魂が弄ばれている。
「まさか魂まで抜いちまうなんて。元気玉で来るかと思ったら人魂取りやがった」
「うまくねぇよ。つうか本当にあいつらの魂なのか?」
「間違いねぇよ。一匹メガネかけたヤツがいるだろうが!」
「なんで魂までメガネかけてんだよ」
「魂までメガネつうか、メガネが魂なんだよ新八は!」
それに、と銀時は定食屋のおやじから少し離れたところを指差す。土方はその指の先を見て目が点になった。
「アレは絶対海だろ!」
一匹離れてふらふらとしている魂。それは迷子になっているようにも見えた。
「なんでアイツは魂になっても迷子になってんだよ!アイツ死んだら成仏出来んのかよ!」
「不吉なこと言うんじゃねぇよ!」
ふらふらと彷徨う魂を見て土方は深いため息をつく。銀時は定食屋のおやじに見つからないように海らしき魂を回収した。
「お前、それどうすんだよ。どうやって戻すんだよ」
「海の中に戻せば目ェ覚めるんじゃねぇの!?」
魂を指先で摘みながら海の身体へと近づき魂を胸元へと近づける。だが、むにっと潰れるだけで魂は海の内へと戻らなかった。
「え?どうすんのこれ。どうやって戻すの!?」
「お、おい!早くしろ!おやじに見つかるだろうが!」
魂を海に押し付ける銀時と親父に見つからないように銀時と海を隠す土方。そんな二人から参列者たちは目を逸らし「あの人たち絶対やばい」とブツブツ呟いていた。
「ダメだ。入らねぇ……!」
散々潰された魂はくてっと疲れたように銀時の手の中で大人しくなっていた。
何をしても海の身体の中へと戻らない。どうしたものか、と悩み始めた銀時へと定食屋のおばさんから声がかかる。
「銀さん、土方さん。悪いけど手、貸してくれる?棺桶運ぶの」
おやじの棺桶を運ぶなんて冗談じゃない。これ以上、おやじの機嫌を損なわないようにするには関わらないのが一番なのだ。
二人が思いついたのは己の左腕を負傷させることだった。
「す、すいませーん。今、僕左肩外れてるもんで」
「僕はこの通り骨折してるんで申し訳ないっす。おばちゃん」
「ああ、そうだったの。ムリ言ってごめんね」
おばさんが残念そうに謝ったあと、おやじが近藤たちの魂をまな板にのせて棒でこね始める。サーっと血の気が引いていき、二人は慌てて棺桶へと走り出した。
「……と思ったら気のせいだったー!やります!ぜひやらせていただきます!なっ、土方くん!?」
「いやー、実は前から一度棺桶持ってみたかったんですよ。なっ、坂田くん!」
負傷させた左腕はぶらりと揺れていて使えそうにない。右腕だけで棺桶を支えなくてはいけないという状況に二人は頭を抱えたくなった。
「……ど、どうすんだよこれェ」
骨折した左腕を支えながら銀時は棺桶を睨むように見た。
そんな視界の端からふわふわと魂が寄ってくる。それは銀時の左腕ぽすっとぶつかってから顔の方へと上がってきた。
「海?」
銀時の左頬にぴたりとくっついた魂。うりうりと頬を押したかと思ったら、銀時から離れて目の前を飛んだ。
「こら、大人しくしてなさい」
そうやって勝手にふらふらするから迷子になるんでしょうが。と本人に届いているのか分からない注意をしてから銀時は自分から離れようとした魂を優しく掴んで懐へと忍び込ませた。
「そこでじっとしてなさい」
もぞもぞ動く魂を撫でて落ち着かせ、銀時は棺桶へと手を伸ばした。
その後、おやじの遺体を巡ってトラブルが勃発しまくったが、なんとかおやじを成仏させることが出来た。
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