第183幕
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早く、早く!
吹雪いてきた雪山を朔夜は必死に走っていた。
見逃さないように周りをキョロキョロと見ながら足を動かした。
「坂田さん!土方さん!!どこにいるんですか!!」
声を張り上げて二人を探すも中々見つからない。もしかして行き違いになってしまったのか。今来た道を振り返り戻るべきかと悩んだ。
「ど、どうしよう……」
戻って銀時たちと会えればいい。それならそのまま海の所に連れて行って助けてもらえる。けど、もし銀時達がいなかった場合。またここまで戻ってくる必要がある。そんな事をしていたら海が凍えてしまう。
「兄さん……!」
朔夜は戻ろうとした足を再び前へと動かす。戻るよりも銀時たちがいた上へ行くことにした。
まだそこに銀時たちがいると信じて。
「坂田さん!!!土方さん!!!」
喉が張り裂けるのではないかと思うほど大きい声で叫んだ。ここまで叫んだのは初めてで、自分はこんなにも大きな声が出せるのかと驚く程に。
「朔夜くん?」
「え?」
聞き慣れた声の人物に名前を呼ばれて朔夜は声の方へと顔を向けた。そこには鼻を赤くした新八が立っていた。
「朔夜くん!!無事だったの!?」
「新八……さん」
「大丈夫!?海さんは?一緒じゃないの?」
慌てて駆け寄ってくる新八の姿を見つめていた朔夜は力尽きたようにその場に座り込んだ。
「大丈夫!?」
「兄さんが……兄さんが怪我してて!僕じゃ兄さんを運べないんだ」
ボロボロと泣きながら新八の服を強く引っ張った。兄を助けて、と必死に頼む朔夜に新八は戸惑うばかりで動いてはくれない。新八を海の元へと連れていこうとした時、グイッと襟を引っ張られた。
「どこにいんだよ」
「銀さん!」
「坂田さ、」
「どこにいんの。海は」
静かな声で聞かれたおかげで興奮が落ち着いていくが零れる涙は止められず、しゃくりあげながら朔夜は海がいる方向を指さした。
「怪我してて、動けなくて!」
「ったく、ホントにあいつは」
バカなんだから。と一言残して銀時は朔夜が指さした方へと歩いていった。その後を自分も追おうとしたが、横から腕を掴まれて動きを止めた。
「海さんならきっと大丈夫だよ」
「でも!」
「銀さんがちゃんと連れて帰ってきてくれるよ。だから僕たちは待ってよう?」
にこりと微笑む新八に朔夜は納得出来ずにいた。それを知ってか知らずか、朔夜の腕を掴む手に力が込められる。
「新八さん……」
「きっと大丈夫だよ。ね?」
「……うん」
逡巡してから朔夜はこくりと小さく頷いた。
「小屋が見つかったんだ。将軍様も見つかったから、朔夜くんもそこで温まろうよ。海さんのためにここまで走ってきたんでしょ?もうこんなに手が冷たくなってる」
「坂田さんたちを早く見つけたかったから」
「頑張ったんだね。もう大丈夫だから安心して」
新八の言葉に何度も何度も頷いた。新八に連れられて来た小屋には土方たちがいて、朔夜の姿を見た瞬間皆ホッとした顔をしていた。随分と心配させてしまったようで、朔夜はぎこちない笑みを浮かべながら「ごめんなさい」と一言謝った。
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