第183幕
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『土方、本当に近藤さん一人で行かせてよかったのかよ』
「公正な選び方でそうなったんだ。仕方ねぇだろ」
『じゃんけんのどこが公正な選び方なんだよ』
雪山の中を近藤は裸同然の格好で将軍を探しに行った。その寂しそうな後ろ姿を土方と海は見送る。
近藤に着ていたコートを渡そうとしたのだが、逆に変態さが増すというのと、サイズが合わないという理由で返されてしまった。唯一身につけているとしたらパンツと手袋。そんなものでこの寒さを凌げるとは思えないが、近藤は諦めた顔で将軍を捜索するべく雪山へと消えていった。
『やっぱりもう一人ついていった方が良かったんじゃないか?』
「決まったことにグチグチ文句言ってんじゃねぇ。俺たちのこの状況も良いとは言えねぇこと分かってんだろうが」
『そりゃそうだけどよ。大将があんな体張って頑張ってんのに、部下がこんなんで良いのかって話』
「近藤さんがちゃんと護衛の任をやっててくれりゃあ、こんな事にならなかっただろうが」
確かに。お妙にうつつ抜かしてなければこんな事にはならなかった。
だから近藤がこうなってしまったのは仕方ないこと。そう納得してしまった海はそれ以上何も言わなかった。
「おい、かまくら作るぞ」
「かまくら?兄さん、かまくらってなに?」
『雪で作る家みたいなもん。とりあえず作っておけばこの冷たい風は凌げるだろ』
黙々と作り始めた総悟を手伝うように海も雪を集め始める。それを見ていた朔夜も海にならうように雪を固め始めた。
『つか、お前も手伝えよ』
「あ?んなもんお前らで十分だろ」
「海さん、諦めやしょう。三人入れるくらいのスペースの大きさにしましょう」
『そうだな。手伝わないのならアイツが入れる理由ねぇもんな』
「なっ、テメェら!!」
「土方さん!働かざるもの、ですよ」
総悟にはかまくら追い出され、朔夜には笑顔で棘を刺される。海は土方を一瞥しただけ。
「やればいいんだろうがやれば!!」
『最初から手伝えって言ってんだろうが』
命がかかっているのだから面倒くさがるなと土方を睨めば、渋い顔をして目を逸らされた。
「なんか楽しいね!これ」
「遭難してなければもっと楽しいんだけどな」
「そうだけどさ。でも、なんかキャンプしてる気分で楽しいよ?」
『危機的状況でも楽観的に考えれる朔夜の頭が羨ましいわ』
楽しげにかまくらを作る姿に呆れを感じつつも、普段あの屯所にこもりきりで仕事をしているのを思い出せば、こんな状況でも悪くはないかと思ってしまう。
「朔夜の頭の中がお花畑なだけだろう。お前もう少しシャキッとなるように育てろよ」
「僕はいつでもシャキシャキしてますよ?ほら、採れたてのレタスみたいに!」
『だそうだ』
「変なところばっか似るんじゃねぇよ!」
「うるせぇ!このレタス兄弟!」と怒鳴られ、しかも何故か海は土方に頭を叩いた。暴力反対、と呟くと再度怒鳴られる。
『お前、パワハラで訴えるぞ』
「残念だったな、俺が警察なんだよ」
『警察以上の人間に訴えれば良いってことだろ?任せろ、跡形もなく潰してやるよ』
口元を歪ませて怪しい笑みを浮かべる海に土方は引き攣った顔で一言謝った。
「わ、悪かった……俺が悪かったからその顔はやめろ」
『分かればいい』
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