第183幕
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「どちらにせよ、このままパンイチで放っておけば将軍様の命はないわ」
『お妙さん、パンイチの人もう一人いるんだが』
「なに?海くん。寒いの?手を繋いであげましょうか?」
『いや、俺じゃなくて……』
近藤がパンイチのことに気づいていないのか。それとも知ってる上で無視を貫いているのか。涙目でこちらを見てくる近藤から目を逸らし、海はお妙によって繋がれた右手をじっと見つめた。
「どうかしら。体を温めるには裸で抱き合うのが一番っていうじゃない?裸の人を探索に向かわせましょう」
『待て待て待て!それじゃ近藤さんが凍死するから!』
「あら、死なないわよ。頑丈でしょう?」
『頑丈といっても無理があるからな!?』
後ろで近藤が泣きべそをかきながら騒いでいるのを耳にしながら海は頭を抱えた。
これも全て普段の行いのせいなのだと思ったら何も言えなかった。
「将軍救うにしても、みんな揃って打首になるにしても、まずは俺たちの安全を確保しねぇと」
「分かってます。俺たち遭難してるんですぜ」
「確かに一理ある」
ぴくっ、とその声に反応して振り返る。なんでこんな所にコイツがいるのだ。大体、なんでこんな自然にこの輪の中に溶け込もうとしているんだ。普通ならば即刻逮捕のはずなのに。
『なんかもう言うのも疲れる』
「大丈夫?兄さん……」
「もう少し気楽に考えればいいんじゃねぇか?ほら、後ろにいんのただの雪だるまだし」
『雪だるまねぇ?』
輪から外れた所にいる桂へと憐れみの目を向ける。桂はその目に気づいて何か言おうとしていたが、海はそっと顔を逸らす。土方と総悟がいる手前、桂との会話は極力避けた方がいいだろう。
「……海、寒くないか?だってよ」
『親かよ。寒くないって言っといて』
「はいよ」
状況を察してくれた銀時が海の言葉を桂へと返す。銀時も真選組がいるを考え、さりげなく口を開いていた。
「寒くなったらいつでも飛び込んでこいだってよ。ったく、あいついつから母親みてぇになったんだよ」
『元からだろ。あの無駄な母性本能』
昔から何かと海の事を気にかける。それがむず痒くていつも素っ気なく返しているのだが、それでも桂は海の心配ばかりしてくるのだ。それはもう父性というより母性。
「ねぇ、兄さん」
『ん?』
「兄さんはあの人と知り合いなの?」
『は?』
小声で話しかけてきた朔夜の言葉に目を見開き、咄嗟に土方たちを見た。向こうは向こうで話し合っているのか、朔夜の声には気づいていない。
『なんでそう思ったんだよ』
「なんとなく……仲良さそうだなって」
「いんじゃね?コイツにならバレても」
『銀時、お前!』
軽く言ってのけた銀時の言葉に冷や汗が垂れる。いくら弟と言えども、指名手配である桂と繋がっているなんぞ知られるわけにはいかない。どこからどう話が漏れるか分からないのだから。
「やっぱ知り合いなの?」
『ちが……』
「幼なじみだよ。俺らは」
「幼なじみ?」
『銀時!もう黙れ!』
「海こそ黙れって。そんなデケェ声出してたらそれこそアイツらにバレるだろ」
銀時が真っ直ぐ見ている先は土方と総悟の方。土方がこちらをじとりと睨むように見てきたが、声をかけてくることはなく、総悟たちとの会話へと戻った。
「どうせ隠してたっていつかバレんだろ」
『今言うことじゃねぇだろうが』
「遅かれ早かれバレるならいつでもいいじゃねぇか」
そうじゃないと言い返したかったが、銀時があまりにも優しげな顔でこちらを見るから何も言えなくなった。例え誰かにバレたとしても上手くフォローしてやる、と言っているみたいで。
『バカ天パ』
「はいはい」
「……ねぇ、二人でいい空気作るのやめてくれませんか」
右隣から突き刺すような視線が浴びて顔を伏せる。頭には銀時の手が乗った。
「いい空気じゃなくて、甘い空気って言うんだよ。お子ちゃまにはまだ早ェよ」
「お子ちゃまじゃないです!」
「お子ちゃまだろうが。お子ちゃまじゃなければ邪魔しませんー」
両サイドで始まる言い合いに海は小さくため息をつく。もう両方共、子供のような気がするのは自分だけだろうか。
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