第183幕
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「兄さん、どうするの?」
ぱちぱちと木が燃える音を聞きながら海は隣に座っている朔夜へと目を向けた。
『将軍を探さないとだろ。こんな雪山で一人なんて危険すぎる』
「そうだけど……僕らも遭難してるんだよ?無闇に動いたら危ないんじゃ?」
今にも探しに行こうとした海の腕を朔夜は掴んで止めた。上げた腰は中途半端な所で止まり、海は朔夜をじっと見つめた。
「テレビで言ってたよ。遭難したらその場を動かない方がいいって」
『今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ。俺らの首がかかってんの分かってるのか?』
朔夜の手を振り払おうと腕を強く引いた。掴んでいた手は呆気なく離れ、海は焚き火から一歩離れる。さて、どこから探すか。そう思いながらもう一歩足を踏み出した時、コートの襟を後ろから引っ張られて身体が傾いた。
「何やってんのお前は」
『離せ。将軍探しに行くんだよ』
倒れた先は銀時のあぐらの上。横になったまま真上にある銀時を睨みつけた。
「お前一人で何とかなるようなもんじゃねぇだろ。つか、一人で行かせるわけないだろうが」
『それでも……』
「ダメなものはダメだ」
行かせない、とでもいうように銀時は海の手を掴んでいた。固く掴まれてしまった手は軽く振り払っただけでは外れない。何度も手を離すように声をかけたが、銀時は頑なに離さなかった。その頑固さに海は諦め、銀時の膝の上で大人しくするしかなかった。
「さらし首だ」
しんと静かになった空間を裂いたのは土方だった。
「事がこうなった以上、ここにいるヤツ全員さらし首だ」
「ふざけんな。善良な市民巻き込んどいてさらし首?俺たちゃ商店街のくじでスキー旅行来ただけだ。地獄旅行はてめぇらだけで行け」
"てめぇら"の部類に自分も含まれているのかと疑問に思っていると、海の身体を抱く手に力が込められる。
「お前は違うから」
『何も言ってない』
「顔がそう言ってんだよ」
苦笑いで見下げてくる銀時から目を逸らす。大体、いつまでこの体勢でいなくてはいけないんだ。
土方と総悟から向けられる視線がとても痛い。なんでそっち側にいるんだと言いたげな顔で睨んでいる土方が一番鋭い目付きをしている。
『銀、もう手を離せ』
「やだ、って言ったらどうする?」
『殴られる覚悟があるんだな?』
「ったく、すーぐそうやって暴力を振るう。自分の思い通りにならなければ暴力で解決しようとするその考えやめたら?」
『毎回そんなことしてるわけじゃない。変な言いがかりはやめろ』
「だっていつもそうじゃん。俺どんだけ海に殴られてるのよ。海の沸点低すぎるんじゃない?」
『知るか!そんな事よりいい加減離せバカ!』
「あだッ!」
宣言通り、銀時の頭へと拳を勢いよく振り下ろす。痛みに悶えている間に海は銀時の元から離れた。
「誰よ、こんな乱暴者に育てたのは!」
「痴話喧嘩は他所でやってくんねぇか」
「どこが痴話喧嘩だ!どこが!」
「全部だろうが。クソ天パ」
海を睨んでいた目は銀時へと切り替わる。心底ウザったそうな顔をする土方に銀時は食ってかかり、今度は土方と銀時との口喧嘩へと発展した。
「兄さん、ダメだよ。頭ばっか殴ったら」
『離さないアイツが悪い』
「殴るなら別の場所にしないと。元々馬鹿なのにもっと馬鹿になっちゃうよ?坂田さん」
『へ?』
今、朔夜はなんて言ったのか。聞こえてはいたけれど、本当に朔夜が言ったのかと聞き返してしまった。
朔夜は何も言わずにただニコニコと笑っているだけ。
あぁ、これ以上聞くのは良くない気がする。最近、銀時への当たりが強いと感じていたが、それは気のせいではなかったのか。
いつの間にか銀時に毒を吐くようになってしまった朔夜に、どこで育て方を間違えたのかと悩んだ。
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