第182幕
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「ん……」
頬へと冷たいものを感じて土方はゆっくりと目を開ける。雪の上に倒れている身体は冷たいのに、頭は何故か温かい。そして視界いっぱいに広がる黒い壁。
ゆっくりと顔を上げていくと、そこには気絶している海の姿が見えた。
「海?」
土方を守るように抱きしめている海。
慌てて身体を起こして眠っている海を抱き上げた。
「海!おい、しっかりしろ!」
なんで海がここに居るのか。気絶する前の記憶を思い出していく。
「確か俺は……」
あの特大の雪玉に巻き込まれたのは覚えている。あの雪玉の中へと身が沈む前に誰かに首根っこを掴まれた。
あれは確か海だったはず。「やっと追いついた」とホッとした顔で海は笑っていたのを覚えている。そこから引き上げようとしてくれたのか、土方の体はぐらりと海の方へと傾いた……が、その直後に海は土方もろとも転んだ。
『ん……土方……?』
そこまで思い出したところで腕の中の海がもぞりと動いた。固く閉じられていた瞼がゆっくりと開かれ、しっかりとその目に土方を映す。
「大丈夫か!?怪我はしてねぇか?」
『ん、大丈夫。土方は?』
「俺は大丈夫だ。その……お前が守ってくれたからな」
海が助けてくれたおかげで怪我はない。そう伝えると、海は嬉しそうに微笑む。その顔があまりにも綺麗だったので、土方は直視出来ずに顔を逸らした。
『将軍と銀時は?』
「あ?あぁ……将軍は……」
はて、どこへ行ったのか。ここまでは共に滑り落ちてきたはず。ならば近くで倒れているのではないだろうか。早く見つけて保護しなければ。
「起き上がれそうか?」
『大丈夫。俺よりも先に将軍を』
海に手を貸して起き上がらせ、共に将軍を探す。土方の後ろに落ちてきた雪の中から一人一人足を引っ張って出してみたが、そこに将軍の姿はなかった。
『これまずいぞ』
「将軍だけいねぇなんて……」
『山崎たちに連絡は?』
慌てて携帯をポケットから取り出すも、電波のところには圏外の文字。これでは山崎たちとも連絡が取れない。
「……嘘だろ」
『将軍とはぐれた上に遭難か』
ぽとりと雪の上に携帯を落とし呆然としてしまう。落とした携帯は海の手により土方のポケットの中へと戻される。
これからどうすればいいのか。もし将軍の身に何かあれば自分たちは全員首が飛ぶ。
「探すぞ……!」
『その前にこいつらどうにかしないとだろ』
気絶している朔夜に手を伸ばして容赦なく頭をひっぱたく海の後ろ姿をぼうっと見つめる。
「どうすりゃいいんだ……」
この場で頼れるのは海だけ。あとはどうしようもない人間たち。将軍を見つけ出して無事に自分たちは仲間と合流出来るのか。無事に屯所に帰ることが出来るのか。
つのる不安に押しつぶされそうになりながら土方はただ、海の背中を見つめていた。
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