第181幕
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「それより旅行の話でさァ。行きましょうよ、たまには海さんもゆっくりしましょうぜ?ゴリラだって冬眠は必要ですよ」
『別に俺は旅行に行かなくてもゆっくりしてる』
どこか行くより部屋でのんびりと好きな本読んでた方がまだいい。見知らぬ土地より自室の方が安らぐ。
「俺、ゴリラじゃないし」
海が作ったパンダを見た近藤は目を輝かせ「俺も作れるかな!?」とみかんを手に取る。近藤の手元を何気なく見ていた時、近藤の頭へと突きつけられる銃口に気づいた。
『あ、』
海の声と銃声が重なる。部屋に響き渡る発砲音に総悟と土方が何事かと驚いた。
「兄さん、パンダどうやって作ったの?」
『あ?あぁ、パンダはこうやって……』
驚く土方たちと変わって、朔夜はいたって冷静。むしろ気にもしていないように見えた。
「冬眠が嫌ならここで永眠しろ。牙を休めることも知らん獣に冬を越すことはできねぇ」
「と、とっつぁん!」
「おめぇ一人ならいいさ近藤。だが、お前は群れを率いるゴリラ……」
「あ、危ねぇ!」
倒れた近藤はむくりと起き上がる。その口には先程、剥いていていたみかんがくわえられ、それを貫くように穴があいていた。
「おめぇの判断一つで群れは雪の中に消える。それでもそのひび割れた牙で行くというのなら、俺がここでその牙を折る。明日ある眠りにつくか、明日のない眠りにつくか今ここで選べ。三秒以内に選ばんとドタマぶち抜く」
『(なんで旅行如きでそんな話になってるんだよ)』
近藤と松平のやり取りを遠い目をしながら見守る。その間にもみかんを食べる手は止めずに。
「兄さんは本当に行かないの?」
『お前は行きたいのか?』
「んー……どっちでもいいかな。僕としては皆と楽しめるのならどこでもいいから」
にこりと笑う朔夜にぽかぽかするものを感じた。年上共の会話を間近で聞いているのに、朔夜だけはブレずにいる。
「兄さん?」
無言で海は朔夜の頭を撫でた。
『いい子に育ってきてて俺としては嬉しい』
「なんかその言い方、坂田さんみたい」
『なんで銀時が出てくんだよ』
「その"良い子"っていうのよく坂田さん使うじゃん。兄さんに」
そう言われて海は銀時の言葉を思い出す。確かによく"いい子"と言われる気がする。どこがいい子なんだと思う時もあるが、大抵はそれを受け入れてしまう。
もしかしてあのいい子というのは銀時の口癖なんだろうか。でも、海以外に良い子、と言っているところを見たことがない。
『俺だけ……?』
「多分?なんかそんな感じする。坂田さん、兄さんのことホント大好きだよね。人前であんだけ惚気けてさ」
『……それは忘れろ』
「兄さんだって好きなんでしょ?」
『べ、つに俺は……』
「そんなに顔赤くさせといて別にはないよね?」
むにっと海の頬へとささる朔夜の指先。自分の顔へと手を当てれば、じんわりと熱が伝わってきた。
『……好き、だけど』
「あ、うん。ごめん、やっぱいいや。なんか兄さんにそう言われるとなんとなく坂田さんに殺意湧く」
『は?なんで?』
「なんでも。この話はナーシ」
笑っていた顔が瞬時に拗ねた顔へと様変わりし、朔夜は海から顔を逸らして近藤の方へと向いた。
一人、放っておかれた海は顔の熱さを冷ますのに必死になっていた。
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