第180幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「なぁ、海」
『ん?』
「お前はいつ思い出したの?」
エリザベスが宇宙へ戻っていくのを見送りながら銀時は隣にいる海へと問いかける。
海はエリザベスの船をじっと見つめながら苦笑を浮かべた。
『じつはさっきまで思い出せなかった。ここに来てUNOやって……やっと思い出した』
「へ?そんな遅かったの?」
『中々思い出せなかったんだよ。悪いことしたな』
「まぁしょうがないんじゃね?あんま海と絡みなかったんだしよ」
『それでもだよ。桂の友人としてずっとそばに居てくれたやつなんだ。そんな奴を忘れたまんまなんて申し訳ないだろ』
エリザベスの乗る船へと律儀に謝る海に笑みがこぼれる。
「今度あったら謝ればいいだろ。つか、お前さアイツとはどうなったの?」
『アイツ?』
「ほらかまいたちがどうのこうのってやつ」
記憶に残るのはあのパーティー会場にいたエリザベス。海と同じカセットを選んだあのエリザベスは海にカセットを譲り同志だと喜んでいた。
その後、海が地球のスパイだと気づいた彼は大層嘆き悲しんでいた。仲間たちが銀時たちと戦っているのに一人しくしくと泣いているほど。
「仲直りしたの?」
『した。というか、かまいたちエリザベスが謝ってきた』
「は?どういうこと?」
『さぁ?よく分かんねぇけど』
「なんじゃそりゃ」
仲直りしているのであれば別にそれ以上のことは気にはしないが、なんだか含みのある話に少しばかり胸がざわつく。
かまいたちエリザベスが海の事を同志として見ているのだから。それ以上のことにはならないのは知っている。ましてや相手は天人。海がその気になるはずも無い。
はずなのだが、
「やだ。海はやんねぇからな」
『は?何の話だよ』
「少し意気投合したからってウチの子はあげませんッ」
なんとなくかまいたちエリザベスに海が取られてしまったかのような気分。そんなわけあるはずがないのに。
『誰が誰にもらわれるんだよ』
「海があのエリザベスに」
きょとんと目を丸くする海に銀時は不機嫌丸出し。そんな銀時に海はため息をついてふわふわと揺れる銀髪へと手を伸ばした。
『俺はどこにも行かない』
「うん。知ってる」
『心配することなんて何もねぇよ。まぁ……』
「まぁ?」
『最近、銀時より弱くなった気がするけど』
「あぁそれなんだけどさ。多分、弱くなったんじゃなくて、海は俺に甘えてるんじゃねぇの?」
『甘えてる?』
よく分かっていない海は頭の上に疑問符が飛び交っているだろう。自分だって気づくのに少し時間がかかってしまったのだから。
「甘えてんだよ。だって俺がいない時は普通だろ?攘夷浪士どもだって軽々と倒せるだろうし、天人だってそれなりに相手してんだろ?」
『それは……』
「俺がそばにいると気が緩んじゃうんだよ。いつも気配読むの上手いのに俺と一緒にいると殺気以外は気づかねぇし」
『……うん』
それは本人も気づいていたことなのか、素直に頷く頭に笑みが深くなる。それは海が銀時に甘えているのを理解してきた証拠。
「俺としては嬉しいけどな。"守る対象"から少し外れた気がして」
『は?』
「やっぱ、守られるより守りてぇから。俺は」
海が銀時を守ろうとするように、銀時も海を守りたい。でも、自分よりも強い海を守れるのかという不安がいつも付きまとう。その不安が海の甘えによって解消されつつあるというなら。
「いつでも甘えておいで、海」
こちらとしては大歓迎だとにこりと笑いかけながら海の頬へと指を滑らせる。擽ったそうに身をよじった海は銀時の手を振り払ってキッと睨んだ。
『ふざけんな』
「え。なんでそこで怒んの!?」
『怒ってはねぇよ。けど、言い方がムカつく』
「はァ!?こんだけ甘ったるく言ってやってんのに何がムカつくんだよ!!」
『お前が言った言葉そっくりそのまま返してやるよ』
「え?」
眉間に深い皺を寄せて銀時から離れていく海が、ふんと鼻を鳴らして不敵な笑みを浮かべる。
『好きなやつは守ってやりたい。それは俺も同じだってこと忘れんな。俺が甘えてたせいで弱くなってるっていうなら見直す。お前に甘えんのは……その、』
"恥ずかしい"とぽつりと呟いた海に銀時は心臓がどくりと跳ねた。顔を赤くした海はふいっと銀時から顔を背けてしまう。その姿がとても可愛くて。
今すぐにでも抱き潰してしまいたくなる。
「こんな時にツンデレ起こさなくてもいいだろ……」
誰かあいつを止めてください。じゃないと心臓がもたない。男前で可愛い彼氏が自分の寿命を縮ませに来てる気がする。
胸を鷲づかんで蹲る銀時に神楽と新八は不思議そうに首を傾げたが、海と銀時を見て理解した二人は蹲っていた銀時へと蹴りを入れていた。
.