第180幕
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「"捜さないでください"……という書き置きだけが部屋から見つかったのだが、捜すなとは一体何を捜すなということなのだろうか?それとも何を捜してはいけないのか捜している時点で捜してはいけないものを捜していることになってしまうのだろうか?だとしたら何を捜してはいけないのか捜してくれる人を捜し、そのうえで捜してはいけないものを捜さないようにするか捜すことにするか決めた方がいいのか、その答えを捜してくれる人を捜しているのだが、それすらも捜してはいけないものだとしたら、その捜してはいけないものを捜す人を捜す人を捜す人を……どわッ!」
「ややこしい」
「何を捜さないでください迷路に迷い込んでんですか?」
「捜さないでください」
「捜さねぇよ。要するにアレだろ?家出だよ家出」
面倒くさそうにテーブルに肘をつき、銀時は持っていたパフェ用のスプーンを弄ぶ。
その動きを桂の隣で大人しく座っていた海が目で追っていることに気づき、銀時はわざと海の前でスプーンを動かし続けた。さながらねこじゃらしを目の前で振られてうずうずしている猫のような海で遊ぶために。
「い……家出だと?バカな、有り得んぞ!俺たちの間には仲違いする原因なぞなかった!あいつを最後に見た時だって……あ……あいつ……あいつって誰だっけ?」
"あいつ"が分からずに戸惑う桂。それは話を聞いている銀時たちにも覚えがない。
ただ、海だけがどこか寂しそうな顔で窓の外を見ていたのが気になった。
「海?」
『なんだ?』
「いや、なんか寂しそうだなって。どうした?」
外の景色を眺めていた目がこちらへと移る。やはりその目はどこか寂しそうな哀愁を漂わせていた。
『……なんでもない。ただ、なんかぽっかり空いた気分』
「ぽっかり?」
こくんと頷いた海はそれ以上何も言わず、また外へと視線を移した。
ぽっかり空いた気分。その意味がわからないわけではない。自分の中から何かが抜けてしまっているのは感じている。でもそれが何なのかはわからない。
それは新八と神楽も同じことのようで、海の一言を聞いてからなにやら思い詰めた顔をしていた。
「(何を……)」
そこまで思ってハッとなる。今自分は何を思った?何を忘れたと思った?
「意味わかんねぇ……」
何かを忘れていることを思い出した。だがそれ以上を思い出すことが出来なくてモヤモヤする。思い出そうとすれば頭の怪我がズキリと痛む。
『銀時』
不意に海に呼ばれて伏せていた顔を上げた。
「なに?」
『無理に思い出そうとすんな。怪我に障る』
ふわりと海の手が頭に乗り、痛む頭を優しく撫でられた。
「海は……!」
『俺、見回り行くから。怪我してんだから無理すんなよ?』
ミルクティー代と言ってテーブルにお金を置いていった海はそのまま店を出ていってしまった。
それから全てを思い出すのにそう時間はかからなかった。
一つ一つ、パズルのピースをはめていくように思い出していった記憶は桂の友人であるエリザベスのこと。
そしてエリザベスの星を壊して自分たちは地球へと戻ってきたことを。
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