第179幕
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「一夜限りのセレモニーだ。辰馬、海!その腕、鈍ってねぇところを見せつけてやれ!」
『鈍るどころかこちとら毎日こういうの相手してんだよ!こんなもん朝飯前だろうが!』
「おう、任しとき。思う存分暴れちゃるきに」
視界の隅に飛んでいくエリザベスを捉えながら目の前に飛び込んでくるエリザベスを吹き飛ばす。
腕に自信がないと言っていた辰馬の方は大丈夫なのだろうかと後ろを振り向く。そこに見えたのは座布団の上に正座した辰馬。名刺をエリザベスへと差し出しているのが見えた。
『……銀、』
「あ!?」
『なんていうか……』
「なに!?ちょ、聞こえないんだけど!?」
エリザベスたちを相手するので手一杯と吠える銀時はまだ辰馬の状態に気づいていない。攘夷志士後方支援の……とか言っている辰馬に冷たい目を向けそうになったが、あれが辰馬のやり方なのだろうと納得した。
『後方支援なんてあったんだな』
「何してんだてめぇは!!」
『あっ、やっと気づいたか』
後ろから聞こえてきた銀時の叫び声にぶふっと吹き出す。想像していた通りのツッコミに思わず笑ってしまった。
"貴様、ここで何をしている"
そんな時に顔を出した一人のエリザベス。そのツラには見覚えがあった。
『お前は……かまいたちエリザベスか』
"我が同志よ。ここで何をしているのだと聞いている"
周りのエリザベスたちはかまいたちエリザベスから一歩身を引き、みな一様に畏怖の眼差し。
『悪いが、お前との同志同盟は破棄させてもらう。この国の天下、取らせてもらう』
かまいたちエリザベスへと刀を構える海に、相手は武器を構えることなく立ち尽くしていた。
"俺はお前を友だと思った"
『それは違う。俺たちは最初から敵同士だ』
一瞬でも心通った時があっただろう。だが、今は違う。地球を侵略しようとしているのであれば敵になる。変わらず刀を向け続ける海にかまいたちエリザベスは未だに武器を構えない。
侍だからと舐めているのかと思ったがそうでもない。ただ、じっと海を見つめているだけ。
『やる気ねぇのか』
"友を倒すことは出来ない"
『だから俺は……!』
"初めての……友達だと思ったのに!!!!(泣)"
『は?は……い?はァ!?』
えぐえぐと泣き始めた相手に素っ頓狂な声があがる。まさか泣かれるとは思っていなかった。裏切られたから怒って武器を手にしてくると、そう思っていたのに。
何故か泣かれた。
『え……いや、なんかすまん。え?ええ?』
"何泣かしてんだよお前!"
"それでも友達かよ!"
『い、や、悪かったって』
「お前もお前で何してんのォ!?」
『ぎ、銀!どうしよう、泣かせちまった!!』
「いや、何泣かしてんの!?」
辰馬からこちらへと意識が向いた銀時にツッコまれる。戸惑いながらも説明しようとしたが、目の前で泣き崩れているかまいたちエリザベスが木刀によって吹き飛ばされていった。
「何したの!?」
『なんか……友達だと思ってたのにとか、初めてのとかって。急に泣き出して』
「はぁ!?そんなことで泣くなよ!」
『多分それ程ショックだったんだろ。俺が裏切ったから』
「裏切ったも何も無いだろうが!ったく、もうこっち来い!」
銀時に腕を引かれて辰馬の近くへと引っ張られる。その間にも後ろから突き刺すような視線を感じていたたまれない思いをした。
『なんでこんな目に……』
「それはこっちのセリフだわ!」
『俺だってあんなことになると思ってなかったんだよ!かまいたちの○のカセット一つでこんな事になると思わないだろ!』
確かにあの時は手を握り返してしまったが、まさかこんな所で再会して泣かれるとは誰が想像できたか。多数のエリザベスから睨まれているのを感じて銀時の着物を掴む。
「まったく、離れるとすぐこれだ。だからお前は目が離せねぇんだよ」
『今回俺悪くないだろうが』
「お前がフラグたてたようなモンだろうが。文句言ってねぇでちゃっちゃっと片付けんぞ。あのバカもなんか変なことしてるし。お前まで変なことされたら俺の身がもたねぇよ」
『悪かったな、変なことしてて』
全部海のせいだと聞こえる言葉にイラッし、銀時の足を踏みつけた。その直後に後頭部を銀時に叩かれる。
『バカ銀』
「バカはどっちだバカは」
『銀時』
「お前だろうが!!」
言い合いをしている間にいつの間にかエリザベスたちは海と銀時を囲っていた。その半数が海へと恨みの込めた目を向けて。
「あのエリザベス泣かせたから大分お前への敵対心強ェんじゃねぇの?」
『知るか。大体いつまで泣いてる気だよ。アイツまだ隅っこで泣いてんだぞ』
エリザベスたちの遥か後方。この広場の隅の方で膝を抱えて泣いているかまいたちエリザベス。
「うわ……お前後で謝ってきたら?」
『……終わったら行ってくる』
「そうしとけよ。なんか可哀想に見えてきたから」
流石に銀時もかまいたちエリザベスが哀れに見えたのだろう。事が終わったら一緒に謝りに行ってやると残して、エリザベスたちの中へと突っ込んで行った。
"許さん!"
『許さんって言われてもな……地球侵略の方が許せねぇよ』
"友人として恥ずかしくないのか!"
『もうツッコむのも疲れたわ』
めんどくさい。文句言うやつ全員斬り倒せばいいか、と深いため息をついた。
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