第179幕
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「出撃命令アル!」
『一日もたせるんじゃなかったのか?』
銀時の手ほどきの元、UNOをやっていた海の耳へと聞こえてきたのは出撃命令のサイレン。
相手していたエリザベスたちはみなカードを床に置いて準備のために広場を去っていった。
『どうすんだ?快援隊が動けないのであれば……』
「俺たちが動くしかねぇだろ」
めんどくせぇ、と呟いて銀時は自身の天パへと指をもぐらせる。柔らかな髪が揺れるの見て、海もその髪の中へと指を差し入れた。
「ん?どうした?」
『いつも見てて思うんだけどよ。お前の髪って触り心地良さそうだよな』
「え?天パへの当てつけ?」
『そうじゃない。ふわふわしてて柔らかそうだよなって話。確かに手入れは大変そうだけどよ。俺、この髪好きだよ』
「……なんか人生で初めてこの髪ちょっとだけ好きになったかも」
指で髪をくるくるっと巻くように遊んでいると、銀時の手が海の頭へと伸びる。その手は黒髪をさらりと撫でた。
「俺は海の髪好きだけどな。サラサラしてて。指通り滑らかで……ずっと触ってたい」
『いつも触ってんだろ』
「そうだけどさ……好きだなって」
髪を触っていた手が後頭部を支えるようにそえられる。そして徐々に近づいてくる銀時の顔。いつものだ、と悟った海は自然と目を閉じて待ち構えた。
「あの銀さん……イチャつくのは後にしてもらえませんか」
「ちっ……これだから童貞は。空気の読めないお子ちゃまだなァ」
「童貞童貞うっせぇわ!」
「あ?なんだ?今流行りの"うっせぇわ"か?巷じゃ子供が真似すっからって賛否両論らしいじゃねぇか」
唇に触れる直前で新八に止められてハッと我に返る。いつもの癖でキスを待ってしまっていた海は慌てて銀時から離れた。
『ど、どうするんだよ。エリザベスも出撃準備しに行ったんだろ?地球侵略目前じゃねぇか。止められんのか?これ』
「心配いらん。準備ならもうできた」
「桂さん!」
「安心したよ。やっぱりあいつはあいつだった。俺の信じてたエリザベスだった。地球人と蓮蓬、立場の違いでいつの間にかこんな遠く離れてしまったが……俺たちの信じるものは何も変わっちゃいなかった。ならば俺も裏切る訳にはいかぬ。友が信じてくれた俺を……。蓮蓬は俺が止める!例えエリザベスを斬ることになろうとも……」
すらりと抜いた刀を手に桂は決意を固める。刺し違えたとしてもエリザベス立ちを止めると言ったその目は揺るぎないものだった。
『桂……』
「ヅラ……」
桂が決めたことならば止めることはしない。きっと考えて悩んで出した答えなのだから。
友として出来ることはただ一つ。
「俺はエリザベスら前線部隊を食い止めに行く」
「待つアル、ヅラ!お前エリーを!」
「おう!思う存分暴れて来い、ヅラ」
「てめぇが露払いしてる間にこっちは大将首取らせてもらうとすらァ。な、海」
『ん。怪我すんなよ、桂』
「フッ……俺を誰だと思ってるんだ海」
『あぁ……悪かったな。狂乱の貴公子さんよ』
互いに背を向けて歩き出す。行く先は違えど、同じ想いを胸に抱いて。
「銀ちゃん!もっさん!海!」
「首が飛べばどんな大蛇も動きを止めるぜよ。そうなりゃ尻尾も斬らんと済むかもしれんのう、金時、海音。まあ、それまでどがぁに巻き付かれても耐えれればの話じゃが」
『銀、どがぁってなに』
「わかんねぇ。アレだ。多分きっとアレだ」
『どれだよ』
「なんかこう……巻き付くタイプのやつなんだろ。うん。知ってる風装っとけよ」
『なんだよそれ』
辰馬の方言が強すぎてたまに意味わからなくなる時があるのだが、それが今。"どがぁ"ってなんだよと辰馬に聞き返そうとしたが、なんだか聞き返せるような雰囲気でもない。
『(後で調べるか)』
「振り向かんぞ」
「振り向かねぇよ」
「背中は預けた」
四人の間に流れる空気は穏やかで、それは昔良く感じたもの。言葉にしなくても伝わる想いに海は懐かしさを感じた。
『(ほんとコイツらって)』
ひっそりと微笑む。立場が違くなっても友として。あの時、共に戦った戦友として背を預けてくれる桂に。
海は嬉しさと罪悪感が心を占めた。
「海、行くぞ」
「海音、行くぜよ」
"何も気にしなくていい"
大将首を取りに行くと意気込んでいる二人に手を引かれて前へと歩き出す。
『お前らほんと……』
「なに?大好き?俺は愛してるよ?」
「それならワシは金時より愛しとるって返せばええかのう」
「なんでそうなんだよ!てめ、まさか!やらねぇからな!?」
「アハハハ!なんのことじゃろなぁ!」
『誰が言うかばか』
喧しく騒ぐ二人。二人の頭の中は十代のあの頃から何にも変わってはいないのかと呆れもした。そして何一つ変わっていないことの安堵。
『変わったのは俺だけか』
「なんも変わっとらんぜよ」
『え?』
「ほんと。お前はなんも変わってねぇよ。相変わらず大食いだし、見てないとすぐ迷子になるし」
「バカがつくほど優しいところも、金時に流されてアホなことしてんのも」
「「なんも変わってない(変わっとらん)」」
「だからそんな難しそうな顔すんなよ。海が変わったっていうなら元に戻してやるよ。悪い方に進んだ時だけな」
『……うん』
「なんじゃ、しおらしい海音も可愛げあるのう。金時じゃのうてワシにすればええぜよ」
「だから海はやらねぇっての!!」
『お前らもううるさいッ!』
段々と恥ずかしくなってきて海は二人のもじゃってる頭へと軽く拳骨を落とす。
そんな海に銀時と辰馬は優しげな笑みを浮かべた。
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